Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
代表新エース候補、久保裕也は強気。
「ゴールを決める。発散はそれだけ」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/04/14 07:00
UAE戦での1ゴール1アシストによって、右サイドのファーストチョイスとなった久保。鋭い眼差しからは野心を強く感じる。
ヘントでは4人抜きゴールを決めるなど絶好調。
今回の代表合流直前には、世界のサッカーファンの視線を集めた。国内リーグ第30節のメヘレン戦。中盤付近でボールを受けた久保は、そのままドリブルをスタートさせた。波のように寄せてくる相手DF陣を3人、4人とかわし、最後はGKの脇を抜く冷静なシュートをゴールに流し込んだ。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシ級とまでは言わないが、洋の東西を問わずサッカーファンなら誰もが興奮するドリブルとシュートは、この節のリーグベストゴールに選出された。
UAE戦でも久保のドリブル突破とゴールへの意欲は際立っていた。これまではボールを受けては味方へ出し、流れるような動きの中から好機を窺うプレーが多かった。しかし今は、相手の懐に向かっていくようなドリブルも仕掛ける。14分に決めた代表初ゴールは、酒井宏樹からのパスをダイレクトで蹴り込み、GKとゴールポストの僅かな隙間をぶち抜いた。敵をかく乱する動き直しから、スペースへ走る。パスを受けたら、あとは打つだけ――。久保がここまで積み上げてきたプレーの完成形だった。
日頃は代表を全然意識しない。それよりゴール。
逞しさも増していた。ピッチ上での姿を見ても、心なしか体つきがしっかりとした印象を受けた。
「実は、下半身を重点的に強化しています。突破には接触プレーが避けられない。競り負けない強さもつけていかないと」
向上心は、とどまるところを知らない。3年前、久保は日本代表についてこう話していた。
「漠然と考えることはありますよ。もちろんプレーしたい舞台ですから。でもその前に、自分がすべきことがまだまだある。だから日頃は、代表のことは全然意識しません。それより、ゴールですよ」