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代表新エース候補、久保裕也は強気。
「ゴールを決める。発散はそれだけ」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/04/14 07:00
UAE戦での1ゴール1アシストによって、右サイドのファーストチョイスとなった久保。鋭い眼差しからは野心を強く感じる。
リオ五輪不出場に「ムカついたけど、これも人生」。
初めての海外移籍で環境や文化が大きく変わっても、豪胆さとゴールへの貪欲な姿勢にブレはなかった。スイスに渡って1年が経過した頃、こう話していた。
「日本に比べたら娯楽も少ない環境。試合でゴールを決める。発散はそれだけですよ」
一方でプレーの詳細について問うと、落ち着いた口調で自分を語る。
「ポジションは中央、サイド、どこでもいいです。どこからでも点を取れる選手になりたい。こっちに来てスプリント、走る量は増えた。ゴール前に入っていく回数を増やせば、得点チャンスも増す。走ることは大事な部分です」
昨年夏、順調にキャリアを重ねていた彼に、試練は突然訪れた。クラブの事情により、リオデジャネイロ五輪への出場が直前で白紙となった。すぐ目の前にあったはずの世界舞台が、自分ではどうすることもできない理由で遠のいた。そんなときでも久保は、彼らしい強気な一面を見せながらこう吐露していた。
「ムカつきましたよ。五輪が近づくにつれて、大会の存在は自分の中で大きくなっていた。モチベーションがマックスに到達しようとしたところで、シャットダウンされた。でも、クラブですぐ次の試合で2点を取って、もう一気に吹っ切れました。これも、人生だと思った」
「とにかく器用貧乏にはなりたくない、ずる賢くいたい」
リオ五輪出場が断たれてから、彼は新たなステージに入ろうとしていた。今年1月、4シーズンプレーしたスイスから、ベルギーのヘントに舞台を移した。以前からドリブルでの仕掛けや突破、そして球際での競り合いは苦手だと自覚していたが、そこから逃げ続けていたら先はない。アタッカーが個の力で戦っていくための大切な要素を身に付けるために、意識を変えた。
「ヨーロッパで何年かプレーして、いろんな考え方が出てきました。昔より柔軟なところもある。でも、とにかく器用貧乏にはなりたくない。日本人は器用にプレーするから監督にとっても便利だけど、そんな選手はそのうちメンバーから落とされる。点を取っていれば、個人での打開力があれば、そう簡単には代えられない。
もちろん守備はしますよ。チームを機能させるために。でもその指示だけで頭がいっぱいになりやすいのが日本人かもしれない。僕は攻撃のために、ある意味ずる賢くいたい。今後は縦への突破とか、自分で前に出るプレーが必要。だからベルギーではDFをどう縦にかわしていけるか、競り合いで負けないためにどう戦うかをテーマにしている」