酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
プロ野球の生涯打率3割は史上24人。
イチローが1位じゃない理由は……。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/04/11 10:30
プロ野球最後の2000年、イチローの打率は.387だった。これは210安打を放った1994年を上回る数字である。
引退前の数年はどうしても数字が下がりがち。
終身打率3割にもうちょっとで届かなかった選手には、榎本喜八(.298)、加藤英司(.2972)、谷佳知(.2969)などがいる。
榎本は引退3年前まで、加藤は4年前、谷は6年前まで3割をキープしていた。しかし以後の成績不振で3割を割り込んだのだ。ベテランの域に入って一度大台を割り込むと、復帰は絶望的だ。王や藤村のように終身打率を横目でにらみながら引退時を考えたくなるのも無理はないのだ。
イチローに1年だけ日本でプレーしてほしかった!
ところで、終身打率と言えば、私にはどうしてもひっかかることがある。イチローだ。
イチローはNPB時代、初の200本安打、パ・リーグ最高打率、NPB1位の7年連続首位打者など数々の記録を残した。終身打率は実に.353、しかし彼の名前は、NPBの公式記録の打率ランキングにはない。
イチローは3619打数1278安打の.353なのだ。NPB公式サイトでは終身打率ランキングには4000打数以上の選手を掲載している。イチローは381打数足りないのだ。
50歳まで現役を目指していると言われるイチローだが、1年でいいからNPBでプレーしてほしかった。381打数だけ足してランキングに名を連ねてほしかったのだ。
仮に.200しか打てなかったとしても、4000打数1354安打、打率は.339。現在1位のリーの.320を大きく上回るのだ。
しかし、そもそもNPBの基準もおかしいのだ。
シーズンの打率ランキングは、規定打席以上の選手で争われる。打席は打数ではない。打数+犠打、犠飛+四死球+打撃妨害+走塁妨害だ。打数だけにすると犠牲バントや四球などが多い選手は、規定打席に届かないケースが出てくるからだ。終身打率も打数ではなく、打席で線引きすべきなのだ。