ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹マスターズ制覇への関門。
“アーメンコーナー後”を乗り切れ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2017/04/04 21:00
ハザードにも落ち着いて処理する術を持つ松山。だからこそ15番、そしてラスト2ホールでスコアを伸ばしたい。
難関アーメンコーナーを苦にしないショット能力。
松山のプレーを見ていて驚かされるのはやはり、胸のすくようなショットの正確性である。
どんなゴルフ場でも、18ホールの中にはスコアを伸ばしにくい難しいホールと、チャンスになる易しいホールとがある。ただ、松山のショットには、そのホールの難度の高さを忘れさせてしまうような威力、魅力があるように思う。
見る側が「このホールはパーで上がれれば良いかな……」なんて、勝手に思いを巡らせていると、ピンそば50cmにつけてバーディを決めている、といったことが他選手に比べて多い印象がある。それとは裏腹に、本人はフォロースルーでフィニッシュを崩したり、感触の悪さを嘆いてトボトボ歩いていたりと、周囲を妙な形でザワつかせるケースも多いのだが。
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そんなショット能力の高さを証明しているのが、例えばオーガスタナショナルの18ホールで最も難しい11番である。「神に祈る思い」でプレーするという、名物3ホール“アーメンコーナー”の入り口。505ydと長く、グリーンの左サイドに池が構えるパー4で、歴代平均スコアは4.35。これに対し松山は18ラウンド平均4.111と、他選手に比べて、このホールを苦にしていないことが分かる。
その前の10番パー4は歴代平均4.29で、11番に次ぐ2番目の難易度。ここも松山は平均4.0とパープレーで抑えている。
“最も易しい”15番パー5で攻めあぐねている。
ところが、同じように18ホールを見比べていくと、ひとつ不可解な数字があった。歴代平均が“最も易しい”ホールで、松山は思うようなプレーができていないのである。
オーガスタナショナルGCで最もスコアを伸ばしやすいのが、15番パー5だ。
グリーン手前の池と、1935年に同ホールでアルバトロスを達成したジーン・サラゼンの名前のついた橋がかかっているのが特徴的なホールだが、歴代平均は4.776。ただ、松山は同ホールで過去に奪ったバーディは3つ、平均4.889と攻めあぐねている。