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甲子園にも球数制限を設けるべき。
斎藤佑樹、太田幸司の頃とは違う。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byTakashi Shimizu

posted2017/04/04 08:00

甲子園にも球数制限を設けるべき。斎藤佑樹、太田幸司の頃とは違う。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

延長再試合は、甲子園のドラマの1つの頂点である。しかし、投手にかかる負担を考えれば、手放しで賞賛もできない。

大阪桐蔭でもエース藤浪晋太郎に依存した。

 高校野球では1人の投手にマウンドを託すことが常習化し、2012年春夏連覇した大阪桐蔭は、のちにプロ入りする澤田圭佑(現オリックス)という好投手がいたにもかかわらず藤浪晋太郎(現阪神)がほぼ1人で投げている。

 そして、今大会の2回戦、福岡大大濠対滋賀学園では福岡大大濠のエース、三浦銀二(3年)が1人で延長15回を投げ抜き、投球数は196球。再試合は2日後の第1試合に行われ、やはり先発で9回を投げ抜き、3失点完投で8強進出の原動力になっている。投げた球数は130球である。

 最初の試合ではストレートが最速145キロを計測し(1回戦では146キロ)、スライダー、カーブ、チェンジアップのキレや両コーナーのコントロールも緻密で、私は他媒体で今大会ナンバーワンの投手と書いた。それが再試合の最初に投げたストレートのスピードガン表示(甲子園球場)は127キロだった。これはかなりショッキングな数字で、それでも監督は続投を命じるのか、と少し感情的になった。

投球フォームが素晴らしい三浦が「127キロ」の衝撃。

 三浦はストレートの速さ、変化球の精度の高さなど長所はたくさんあるが、最もいいのは投球フォームである。

 林卓史・慶応義塾大学助監督はかつて「500球投げても壊れない投手がいるが、1球投げただけで壊れる投手もいる」と言ったことがある。これはもちろん比喩だが、私の大好きな言葉で、投手がいかに繊細な存在か的確に表現している。

 三浦は投球フォームがいい。投げにいくときのヒジの位置が高く、体の早い開きもない。そしてこの腕の振りを誘導するのは下半身である。つまり肩・ヒジに負担のない投球フォームである。その三浦のストレートが127キロだった。私が「ショッキングだった」という意味がわかっていただけると思う。

【次ページ】 球数制限が実施されれば、さらに私立有利にはなるが。

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