話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
鈴木優磨、6戦3得点でもまだ3番手。
代表より欲しい「鹿島のスタメン」。
posted2017/03/14 08:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
面白い選手だなぁと思う。
漫画「クローズ」に出てきそうな面構え、プレーは荒削り。だが、ゴールに向かってガツガツと突進し、点を取ってくれそうな気配を醸し出す。
横浜F・マリノス戦、後半26分から鈴木優磨はその気をプンプンに漂わせ、肩で風を切ってピッチに出てきた。
“俺が決めてやる”。
決意を体全体から発し、ボールを自分のところに呼び込む。鹿島では、ペドロ・ジュニオールと金崎夢生の2枚看板がストライカーのエゴを前面に押し出してプレーしているが、鈴木も2人には負けていない。チームを勝たせるのは自らのゴールであると信じて全力でプレーする。そういう選手には、サッカーの神様からチャンスが与えられる。
教えられても身に付かない“FWの嗅覚”を既に。
後半38分、伊東幸敏のクロスをペナルティボックス内のど真ん中からたたき込み、決勝ゴールを上げた。クロスの質が高かったのもあるが、そこにいるのが鈴木らしい。
「監督からの指示でFW1人は真ん中で残るように言われたので、指示通りにしていたらいいボールが来た。センターバックとの駆け引きとかあるけど、自分はけっこう相手DFの前に入っていくのが得意なんです。それを伊東くんが分かっていたんで、意志疎通ができて決められました」
監督に「真ん中に残っていろ」と言われても、最終的には相手や味方の状況を判断して、ボールが来そうなポジションに入らなければならない。鈴木は味方のクロスがどこに来るのかを予測し、相手DFの前に出て、ドンピシャでヘディングを決めた。
これは教えられてできることではない。いわゆる“FWの嗅覚”と言われるもので、鈴木自身も「計算ではなく、勘で動いてる」と語っている。鹿島の9番は、ストライカーにとって重要な資質と感性をすでに持っているのだ。