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敵の隙も、味方の隙も、壁の隙間も。
俊輔は「空白の瞬間」を見逃さない。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/13 17:00
チームで最も長い距離を走ることもある中村俊輔。「ボールを持って何かする選手」というイメージは正しくないのだ。
ボールを持っていなくても目が離せない男。
73分に失点を喫したものの、磐田は2-1で逃げ切った。開幕3試合目でつかんだシーズン初勝利は、中村の身体に沁み渡っていたようだった。自らのゴールを「みんなが身体を張ったり、ファウルをもらったりしてくれているから」と話し、川又の追加点を「泥臭さという彼の良さが出た」と讃えるあたりに、新天地での充実感がうかがえる。
お馴染みのフレーズも聞かれた。向上心の塊のような男は、勝利をつかんだあとも「まだ」と口にする。
「まだ課題はいっぱいありますし、まだ1勝しただけなので、全員で切磋琢磨して少しずつ積み重ねていきたい」
ここからさらにゲームを重ねていくことで、オンザボールでの走行距離が増えていくかもしれない。だからといって、オフザボールの局面での仕事量が減ることはないだろう。そして、6月に39歳になる中村俊輔は、ボールを持っていない局面でも追いかけたくなる選手である。