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進化続ける女子プロレスラー紫雷イオ。
百キロ超級投げ。UFC戦士狩り。10周年。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/02/21 11:00
体重が倍の選手にジャーマンスープレックスをかけると、こう見える。一目瞭然の「命懸け」の瞬間。
「今回の試合を通して紫雷イオは一段と強くなった」
「前回、ジャーマンでは3カウント奪えなかった。でも、ムーンサルト2連発で取れた。自分自身の試合を何度も見返して研究を積み重ねた結果、私の中で仮説をたてたんです。2回いけば勝てるんじゃないかって。2発、大きい人に2連発が有効なのかなと。
今回は2度目なので、手の内はあまり明かしたくなかったので特訓していますとか言わなかったですけれど、この試合に向けて鍛えに鍛えました。背中を重点的に。それでも、鍛え抜いてもやっぱり重かった。今回の試合を通して紫雷イオ、また一段と強くなったな」
紫雷はまさに「捨て身」だった。
もし投げ方を少しでも失敗すれば、100キロの下敷きになる。ましてや、ジャーマンスープレックスかそれに限りなく近い技の性格を考えれば、自分の首や背骨を自ら危険にさらしていることになる。
失敗は選手生命にもかかわり、まさに命取りになることだってある。
それでも、紫雷は投げることにこだわった。
何度でも戦いたい里村、岩谷、宝城、そしてバイパー。
スーパーヘビー級のレスラーが「ボディースラム・マッチ」を楽しんでいた時代があった。
230キロ近くあったアンドレは「投げられるものならオレを投げてみろ」と投げられない自信を強調した。運よく持ち上げてキャンバスに叩きつければ、それで相手には勝ち名乗りの栄誉が待っていたが、そんな簡単なものではなかった。ハルク・ホーガンもそれに挑んだ。
紫雷はバイパーとの戦いで、逆に投げることでプロレスラーの強さを強調してみせた。
「重かったですね。バイパーは底なしの可能性を秘めていますね。私も成長していますけれど、バイパーも成長し続けている。里村(明衣子)選手だったり、岩谷麻優だったり、宝城カイリとか、自分の中で、何度でも戦いたい相手がいるってこれまでの防衛戦で言ってきましたけど、バイパーも何度戦っても、そのときそのときで違いを味わわせてくれるレスラーだなって、再確認しました」
そんな紫雷に、また異色の挑戦者が現れた。シェイナ・ベイズラー。
元UFCファイターでキックやパンチ、絞めを得意とする。骨格も筋肉も男に近い。身長では大きく紫雷を上回る。
2人は2月23日の後楽園ホール大会で「赤いベルト」をかけて戦う。