野球のぼせもんBACK NUMBER
「WBCは僕の人生を変えてくれた」
内川聖一、悪夢から4年後の決意。
posted2017/02/10 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
AFLO
わざと平静を装うように、内川聖一は淡々と言葉を紡いだ。
「以前、たしかに言いました。WBCでの悔しさはWBCでしか取り返せないのだと。だけど、それはあくまで個人的な問題です。その思いがあるからといって、プレー自体が変わることはない。世界一になるために、試合が始まれば勝つことだけに集中するんだし、過去に何があろうともそこを目指す気持ち自体は変わらないわけですから」
3月開幕の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する侍ジャパンのメンバーに、内川はまた名前を連ねている。28人の代表戦士の中で唯一、3大会連続での出場となる。
内川は、世界一の味を知っている。
'09年の第2回大会である。その時の侍ジャパンが如何に結束し、どんな思いで戦って、そして優勝という最高の結果を掴み取ったのかを肌で感じた。
それを痛感しているからこそ'13年の前回大会は、内川にとってあまりに残酷だった。
“井端が打てば何かが起こる”中での反撃ムード。
「自分のプレーですべて止めてしまった……」
帰国後しばらくしてからのインタビューの中で聞いた言葉だが、その時もまだ唇を震わせていたのが忘れられない。
だから冒頭の言葉を聞いて、今のタイミングでも冷静でいられるはずはないと疑うしかなかったのだ。
4年前、一つのプレーに日本中が悲鳴に包まれた。
それは準決勝プエルトリコ戦だった。試合は打線が沈黙して、日本は大苦戦を強いられる。しかし0対3で迎えた8回裏、ようやく侍ジャパンが反撃に転じた。鳥谷敬の三塁打を口火にこのWBCで絶好調だった井端弘和のタイムリーでまず1点を返した。
“井端が打てば何かが起こる”
それがあの時の侍ジャパンだった。