プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
嫌いな男に勝ったIWGP王者の快感。
オカダ、次はタイガーマスクWと対決!?
posted2017/02/06 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「鈴木さん、強いよ。オレはいままで嫌いでしたけれども、今日で、とても嫌いになりました」
IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカは「嫌いな男」鈴木みのるに勝つ必要があった。負けるわけにはいかなかった。実際に戦って、勝って、その強さを認めた上で「とても嫌いになりました」と余裕を見せた。
2月5日、札幌・北海きたえーる。さっぽろ雪まつり開幕前日にオカダと鈴木のIWGPヘビー級選手権は行われた。
オカダは右ヒザを痛めていた。2日の秋田大会で鈴木軍にやられたもので、歩いて1分のところに食事に出かけるのにもタクシーのお世話になるしかなかった。そんなに傷んだヒザを前日のタイトルマッチ調印式でも鈴木に襲われた。
「新日本プロレスがふざけたことをしなければ……」と鈴木はうそぶいていた。「誰だか知らないけれど、(オカダへの襲撃を)やってください」みたいなふざけた仕掛け(試合前の一連のプロモーションの中での挑発行為)で誘導をするから、「じゃあ、やってやったよ」くらいの気持ちだったのだろう。
オカダは痛む右ヒザにテーピングを施してリングに立っていたが、ガウンを脱ぐと、その不安を抱えた右ヒザはかすかだが、ぎごちなく震えていた。
新日本プロレスの宝を根こそぎ奪い取ってやる!!
何が正義で何が悪か――は、価値観や人生観の違いだからどうしようもない。
「IWGPに限らない。10円玉同然のベルトだろうが、もしかしたら何の価値もないガラクタなのかもしれないが、新日本プロレスの奴らが宝だと思っているもの、全部根こそぎ奪い取ってやるよ!」
鈴木の演説はいつも通りだが、奪い取ったベルトを自らが経営する東京・原宿のグッズ・ショップ「パイルドライバー」に並べて勝手な値段をつけて売却してしまうことだって、やりかねない。新日本プロレスはきっと慌てるだろう。
そして、それを誰かが本当に買い取ってしまったら……まさに前代未聞の出来事ということになる。
それがもし看板タイトルであるIWGPヘビー級王座だったら、新日本プロレスにとっては大事件になるというわけだ。