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なぜ平良拳太郎がプロテクト外に?
巨人の人選過程を妄想してみた。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/01/19 11:00
山口俊の移籍はもちろん痛いが、DeNAとしては平良拳太郎を獲得し、してやったりの結果ではないだろうか。
DeNAは平良を欲しがらないと判断した?
1人、1人の選手の巨人としての必要性、そして逆に、DeNAにとって、どれぐらい必要な選手なのか? まず、それを検証する。
いくら能力の高い選手でも、DeNAのチーム事情として、それほど必要性のない選手。つまり、そのポジションに困っていない場合、その選手はDeNAにとっては“魅力薄”となる。
DeNA投手陣を見渡した時、サイドハンドもしくはスリークォーターの角度を持った投手が一軍レベルに何人かいる。
中継ぎエースの三上朋也に、今季8年目の加賀繁。加えて2016ドラフトでは、2位でサイドハンドの本格派・水野滉也(東海大北海道)を指名・獲得しているではないか。
ならば、平良拳太郎はDeNAにとって必要性の低い投手なのではないか……。そういう判断があったとしたら。
相手にとって必要性の低い選手なら人的補償として指名される可能性も低いのだから、プロテクトの28人に入れなくてもよいという判断が成り立ち、結果として、平良拳太郎はDeNAに移籍した。
FA制度によって、平良は発掘されたともいえる。
「FA(フリーエジェント)」という制度は、資格を得た選手が「FAの権利を行使します」と宣言をして、他球団、自球団との交渉が始まる。
プロ野球協約で認められた当然の“権利”なのだが、日本という国の雰囲気として、組織の盛衰を二の次にして、みずからの利益と欲望にのみ走ったという印象を与えがちで、場合によっては、エゴイスト、裏切り者的な存在に思われてしまいがちなのが実情である。そのへんを配慮して、実際には宣言しきれない選手もいるという話もよく耳にする。
山口俊、FAで巨人移籍。平良拳太郎、FA人的補償でDeNA移籍。
形の上では、山口俊と平良拳太郎の交換トレードである(正しくは、協約に準じた金銭も巨人からDeNAに支払われる)。そこでもし今季、平良拳太郎が山口俊に負けず劣らずの活躍をして、昨季Aクラスに進出したDeNAのさらなる台頭に貢献できたとしたら。
FA制度が、ひょっとしたら巨人という組織の中で埋もれてしまったかもしれない選手を発掘し、活躍に導いたことになろう。