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カップ戦でも出番無く、笑顔は硬く。
本田圭佑の2017年は始まっていない。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/01/13 17:20
今冬の移籍も噂されていた本田圭佑だが、現実味のある話は聞こえてこない。彼の2017年は果たしてどうなる。
“同点のための本田投入”という選択肢が消えた。
ただし、3分間の逆転劇は、ウォーミングアップを続けていた本田が投入される条件を一変させてしまった。
ほんの数分前まで存在したはずの“同点に追いつくために本田投入”という選択肢は、もはや指揮官の頭の中にはなかった。
勝ち逃げを図るモンテッラは、79分に若手DFカラブリアとMFパシャリッチの2人を続けて投入した。故障上がりの主将アバーテも機動力が武器のMFクツカも、4日後のリーグ戦に向けて休養させねばならない。下げどきだった。
試合終盤の88分、中盤をコントロールするために3人目の交代枠は、ボランチの主戦MFロカテッリに託された。
その2分前に、本田はアップをやめていた。ベンチへ戻る彼は努めて無表情であろうとする。
本田の笑顔は、強ばっているように見えた。
モンテッラの采配は冷徹でロジカルだった。
40分以上を費やしてコンディションを仕上げたはずの本田の出番は、1分毎に変化する勝負の機微によって消失した。
長めのロスタイムにFWラパドゥーラが2度の決定機を決め損ねたものの、ミランは2-1でコッパ5回戦の勝ち抜けを決めた。
本田はタイムアップ後すぐにベンチを立つと、真っ先にロッカールームへと姿を消した。
試合後、本田は何事もなかったように、笑顔すら浮かべながらミックスゾーンを通り過ぎた。
「お疲れさまです」と、日本の報道陣へ一言残すのが彼のルーティンになって久しい。
しかし、その夜の笑顔は、チームの大会ベスト8を喜ぶ風でもあり、強ばっているようでもあった。
トロフィーに触れながら、ドーハの表彰式で見せた純粋なそれとはちがっていた。