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名門バレンシアが崩壊の危機に。
監督とSDが辞任、投資家の会長は?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2017/01/14 08:00
リム会長は、シンガポールの投資家。名門バレンシアは彼とともに沈んでしまうのだろうか。
主力を勝手に売られ、スソも会長に決別を告げた。
そして1月7日、今度はスソがスポーツディレクターの座を降りた。
チーム作りに深く関わりながら重要事項の決定権はなくリムの指示に従うのみという立場に嫌気が差すと同時に、1人のバレンシアニスタとして責任を感じたのだろう。一週間前プランデッリと共に出した辞表はチャン会長が受け取りを拒否したが、彼の決意は揺るがなかった。
「昨年の8月14日の朝、チャン会長に『アルカセルをバルサに売った』と言われた瞬間、目が覚めた。わたしは言い返したよ。『ピーター・リムという人には心がないのか』と。ペーニャ集会があった前日(『アルカセルは売らない』と会長はその場で明言)、ソシオ歴50年超の人たちに記念品を手渡すではなくバルセロナへ行ってアルカセルを売り飛ばしていたなんて。それをわたしは新聞で知るなんて。バレンシアファンの気持ちを何とも思っていないのか。ファンやスポーツディレクターに対する敬意は?」
バレンシア市内のホテルで開いた記者会見でスソは深く沈殿していた思いを吐き出し、クラブは組織構造の面で危機的状況にあると訴えた。
歓待からわずか2年で「ゴー・ホーム」。
2014年10月25日のメスタージャスタジアム。
当時の会長アマデオ・サルボに案内されたリムがVIPシートに姿を現すと、周囲の観客は立ち上がって拍手を送った。バックスタンドには「ようこそピーター」という巨大な人文字が作られた。その8時間ほど前、自身の会社メリトン・ホールディングスをもってバレンシアの株式の70%を買い取った彼は、青息吐息のクラブを救う者だったからだ。
あれから2年と2カ月少々。
バレンシアはリムが約束したCL出場圏から遠く離れたところを迷走している。
クラブ創立100周年を迎える2019年に完成するはずだった新スタジアムはいまだ竣工の目途が立っていない。
国王杯セルタ戦が行われた5日のメスタージャ前では、「リム ゴー・ホーム」としたためられた横幕がサポーターによって大きく広げられていた。