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名門バレンシアが崩壊の危機に。
監督とSDが辞任、投資家の会長は?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2017/01/14 08:00
リム会長は、シンガポールの投資家。名門バレンシアは彼とともに沈んでしまうのだろうか。
会長に即戦力購入を直訴するためシンガポールへ。
監督はチームに対し発破をかけたという。
やる気がない者、苦しむのが嫌な者、やられてカッとならない者、このユニフォームに愛情を感じない者は出ていけ!
それでもバレンシアは敗れた。
翌日の早朝、プランデッリはスソとライフーン・チャン会長と一緒にシンガポールへ飛んだ。すでに獲得が提案されていた21歳のセルビア代表MFマキシモビッチのような将来有望な若者ではなく、26歳以上の即戦力の購入をリム会長に訴えるためである。負け犬になり果てたチームの立て直しには、強力なカンフル剤が必要と考えたのだ。
会談の結果にプランデッリは満足した。
ユベントスがウェストハムに貸し出しているザザに自ら連絡をとり、加入の約束をとりつけもした。彼こそいまのバレンシアに欠けている闘志を持ち、かつメスタージャのプレッシャーに屈しないフォワードだから。
まとまった金が必要になった瞬間、クラブは腰が引けた。
なのに12月30日、突如辞意を表明する。
いったい何があったのか。
「1月になったら新戦力を4人獲得するとリムは言ったのに、クリスマス休暇から戻った後の29日、シンガポールにいる会長とビデオ会議をしたら『1人だけになった』と。おまけに24時間以内にFWかMFかを決めろと言われた」
一方で、バレンシア入りに同意しているザザとの交渉をクラブはまだ済ませていなかった。
「4人が1人になった上、話がついている選手をまだ連れてきていないということは何かがおかしい」
もともとプランデッリは、バレンシアを欧州トップレベルの強豪に戻すという「大きなプロジェクト」でスソに口説き落とされた。ところが、まとまった金が入用となった途端、それはチームの1部残留さえ危うい矮小なものに一変した。
プランデッリは落胆し、身を引くことを選んだわけだ。