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箱根の青学大に隙はあったが……。
3連覇目は「駅伝っぽい」勝ち方で。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/01/05 18:20
最後は独走状態になった青山学院大学だが、道中はかなり厳しい戦いを強いられた。駅伝特有のドラマが見られる、熱いレースだった。
最大のピンチ、7区・田村の脱水を8区・下田が救う。
そして最大のピンチは、7区を走った田村が脱水症状に見舞われた時だった。
やはり、箱根ではごまかしはきかない。体調に不安があれば、それが如実に表れてしまう。田村が本来の調子であれば、この7区で決定的な差をつけることが出来ただろうが、逆に早大に1分21秒まで挽回されてしまった(ただし、田村がよくぞこのタイム差でつないだと見ることも出来る)。
しかし、このピンチを8区の下田裕太が救った。
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今回の箱根駅伝、個人的にMVPを選ぶとするなら、ためらうことなく下田を選ぶ。区間2位の大塚倭(神奈川大)に2分以上の差をつけるダントツの区間賞。惜しくも区間記録更新はならなかったが、全10区間中、最大のダメージを相手に与えた。
「チームの主軸と言われながら、出雲、全日本といい働きが出来なかったんですが、ようやく箱根でチームに貢献できたかなって思います」
レース後、下田はホッとした表情を見せた。
「駅伝っぽくて、いいかな」が意味すること。
今年のチームで三大駅伝をすべて走ったのは、下田、田村の3年生2人と、主将の安藤、一色の4人である。
この4人衆、三大駅伝すべてで好走したわけではなかった。しかし、どこかで大きな仕事をして優勝につなげている。
出雲では、5区を走った安藤が素晴らしいラストスパートで東海大を逆転。全日本ではアンカーの一色が早大を抜いて優勝を決め、田村は両駅伝で安定した走りを見せていた。そして箱根でようやく下田が仕事をして、中心選手としての役割を果たした。
駅伝シーズンを通してみれば、全員が完璧な仕事をしたわけではなかった。しかし、集団としてみれば、他のメンバーの落ち込みを好調の選手がカバーして優勝をつかみ取った。
まさに「チームワーク」の勝利といえよう。
チームの和とか、そういった類の話ではない。あくまで、ミスをカバーできる選手が揃っていたという意味で、「チームが機能した」ということである。
安藤が言う「駅伝っぽくて、いいかな」とはこのことを見事に言い表している。