球道雑記BACK NUMBER
デスパイネ騒動はむしろチャンス。
井上晴哉がロッテの主砲になる日。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2016/12/30 11:30
主砲デスパイネが去った今、豪快さと器用さをあわせ持つスイングを持つ未完の大器・井上に、ロッテの主軸としての期待がかかる。
怪我に泣く年が続いて、崖っぷちに追われた井上。
2年目の飛躍が期待された1年目の秋季キャンプでは腰を痛めて、2015年はわずか5試合の出場にとどまった。
「このままでは自分の野球人生は終わる……」
窮地に陥った井上は、その年のオフに社会人時代に所属した日本生命へと出向き、在籍しているトレーナーから怪我をしない体作りについて学んだという。それを2016年のシーズンを通して続けてきたのだ。
「2016年は朝の生活を変えるところからスタートしました。肉離れをしたときも、実はその前から前兆があったり、腰を痛める前も膝に前兆があったりして、そのパターンが続いていたので、そこを変えようと考えました。
まず、シーズン中は朝早めに球場入りして、腰回りのトレーニングを続けました。体を伸ばすのではなく、動かす系のものです。胸周りの筋肉を動かしやすくすることで、他の部分も動かしやすくなるというもの。胸周りの可動範囲を広くするため、それを重点的にやってみたのですが、今年はそのおかげで怪我もなく一年間やれました。そこに何らかの意味があったんじゃないかと思います」(井上)
ファームではあれだけ活躍したのに、一軍のCSでは……。
この秋のキャンプでは技術的な部分でも変化があった。
打撃指導を行った山下は、こう話す。
「これまでは、結果を残したいと思うあまり体の開きが早くなっていたと思うんです。そうしたメンタルの部分も含めて、彼本来のバッティングである逆方向の打球が一軍にいるときは消えていた。そこは本人も分かっていたことだと思うんですけど、この秋のキャンプではそれも修正出来たかなと思います」
ファーム(二軍)では今年、69試合に出場して打率.342、本塁打15、打点50と圧倒的な数字を残している。だが、CSファーストステージ第1戦で相手先発(福岡ソフトバンクの千賀滉大)との相性を買われてスタメンに起用されたにもかかわらず、期待に応えられぬまま沈黙。結局、目立った成績を残すに至らなかった。
いったい何が足りないのか。