沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
浜中俊よ、なぜ右鞭を連打した。
斜行で長期騎乗停止も降着なし。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2016/11/21 11:15
左にヨレたミッキーアイルに押し出される形で、ネオリアリズム、サトノアラジン、ディサイファ、ダノンシャークが衝突した。
先頭の馬が勝ち馬になるのはわかりやすいが……。
新ルールでは「極めて悪質で他の騎手や馬に対する危険な行為によって、競走に重大な支障を生じさせたと裁決委員が判断した場合、加害馬は失格」となっているのだが、それほど「悪質」でも「重大な支障」でもなかったと判断され、失格にならなかったのだろう。
また、前述したように、走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着したと裁決委員に認められなかったから降着にならなかったわけだが、「5位までに入線した馬の着順に変更の可能性がある」とみなされたから、審議ランプが点灯した。
つまり、今回の斜行による走行妨害は、それほど際どいものだった、ということだ。
浜中にガッツポーズもなければ、下馬してからの表情も硬かった。
新ルールは導入前から、加害馬のやり得になる可能性があると懸念されていた。その一方で、一番いいパフォーマンスを発揮して先頭でゴールした馬が勝ち馬として記録に残ることにも、競馬は「繁殖馬選定競走」であるという原点に立ち返ると、意味がある。
新ルールには、パッと見でもっとも強かった馬が勝ち馬になるというわかりやすさがある。しかしそのかわり、斜行で他馬の走行を妨害し、被害馬の能力発揮に重大な影響を与えたら降着になる、というわかりやすさがなくなった。
前週のエリザベス女王杯でも、1コーナーでマリアライトらの進路が狭くなる不利があった。
騎手が必死になるGIだから、こうした事例が起きやすいのかもしれないが、競馬を始めたばかりの大勢のファンも馬券を買って参加するGIだからこそ、フェアで、綺麗なレースをしてもらいたいと思う。