サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「大迫は完璧だった」と語った岡崎。
それでも“代表の武器”との自負を。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/11/20 08:00
大一番で投入されたのは後半アディショナルタイム。それでも岡崎はチームの勝利のため、いつものように粉骨砕身した。
試合に出たいと願うあまりに生まれる、ある弊害。
ブンデスリーガで2季連続二桁ゴールをマークし、マインツで確固たる地位を築いていた岡崎。ドイツ国内の強豪クラブからのオファーを蹴って、当時プレミアリーグ下位のレスターへの移籍を決意したのは'15年のことだった。
マインツ在籍時に1トップでゴールを獲るという形を身につけ、ストライカーとしての自信を秘めてW杯ブラジル大会に挑んだが、そこで待っていたのは厳しい現実だった。そして翌年のアジアカップでも惨敗した。
さらなる成長を促すためには、環境を変えるしかないと岡崎は考えた。手持ちの武器だけを高めるのではなく、新たな武器も手にしたい。当時29歳のストライカーは文字通り、貪欲な挑戦を選んだ。タイトルは手にしたが、ゴール数は芳しくなく、新シーズンにふたりのFWが加入。ポジション争いは当然激化していた。そんな状況での10月20日、岡崎は次のように話した。
「試合に出たいと願うあまりに、ネガティブなことを考えてしまう。そうなるとモチベーションが上がらないんですよ。だから、ただ純粋に、俺がうまくなることだけを考えることにしました」
ふっきれたような声は明るかった。
ザック時代は内容にこだわっていたけど、今は勝利を。
「チームが不調に陥れば……」
「先発起用の選手が負傷すれば……」
チームや誰かの不幸を待つのではなく、自身の好機は自分で作りだすしかない。当たり前のことではあるが、気持ちを落ち着かせることは意外と難しい。苦境とネガティブな感情は隣合わせだからだ。
岡崎が語った2日後、クリスタルパレス戦で先発起用された岡崎は、今季リーグ戦初ゴールを決めた。
「代表はね、結果が一番なんですよ。前(ザッケローニ監督時代)は、自分たちのサッカーという内容にこだわっていたけれど、今は、勝つことにこだわっている」