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「大迫は完璧だった」と語った岡崎。
それでも“代表の武器”との自負を。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/11/20 08:00
大一番で投入されたのは後半アディショナルタイム。それでも岡崎はチームの勝利のため、いつものように粉骨砕身した。
「サコに関していえば、完璧だった」と認めた。
岡崎は自分の気持ちにいつも正直だ。だから、つねに模索し、悩む。そして、一度口にしたことを撤回、方向転換することにも躊躇がない。この柔軟性が彼の武器なのだ。
昨季、プレミア優勝という輝かしい結果を残したレスターでも最初の半年ほどは“思考”錯誤を重ね、その末につかんだポジションだった。しかし、今季は出場機会がなかなか訪れず、前記したように代表でもプレー時間が限られるようになっていた。9月のチャンピオンズリーグ初戦でベンチ外となったときは、大きな動揺もあった。
その中で、岡崎は思い出した。
「プレミアリーグへ移籍して、試合に出られなくて、代表に呼ばれなくなるようなことがあっても、それでも挑戦しなくちゃいけない」という覚悟をした自分のことを。
覚悟はできていると言いながらも、実際その立場に追いやられたときの心境。それは想像することは到底できないのだ。
そして、数分しか出場できなかったサウジアラビア戦後にも似たような想いを抱いたのだろう。
「こんなふうに闘えるチームになったのは良いことだと思う。サコ(大迫)に関していえば、ゴールこそ決められなかったけれど、完璧だった」
「今日のような試合がずっとできるとは思えない」
ポジションを追う立場に立たされたと実感できるからこそ、整理できる思考もある。
「監督も僕も、今の自分に納得はしていない。代表で自分の生きる道を探し、模索していくだけ。そのきっかけをつかむのが僕は得意だから」
清水エスパルスでプロデビューしたときから、自身の存在価値を高められたのは、求められていること、チームに足りないピースを察知し、必要なプレーを表現したからこそだ。環境や状況を読む巧みさが、岡崎のキャリアを輝かしいものに変えてきた。
だからといって、急に高い技術や強靭な身体能力を身につけられるわけではない。自分が出来ることの質を高めながら工夫する思考があるから“きっかけ”を掴めたのだ。岡崎はサウジ戦のベンチで考えたことを、こう続ける。
「今日のような試合がずっとできるとは思えない。自分たちが劣勢になり続けて、自分たちが全然ボールをもらえないってなったときに、僕が必要になってくると思う。もっと上でやりたいとプレミアリーグへ移籍した。代表でのチャンスを掴むためにはプレミアで結果を出し続けるしかない」