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「それじゃ三浦大輔はアカンやろ」
ハマの番長が語る引き際の美学。
posted2016/11/08 16:30
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Naoya Sanuki
2010年3月20日は、三浦大輔にとって長いプロ野球人生でも最悪の日だった。その年の開幕投手に内定していながら、ジャイアンツとのオープン戦で4回8被本塁打14失点と炎上。それから6日後、開幕マウンドに三浦の姿はなかった。
「前半戦はファームで。ファームでも打たれて。何をやってもダメだったんですね。あのときに『あ、引退するってこういう感じなのかな』って」
この不振をきっかけに、三浦は年齢に対するアプローチを変えた。
「それまで僕は、歳とともにスタミナが落ちてくるものだと思っていた。だけどファームのトレーニングコーチから、『マラソンは年配の方でも若い人に勝つことができる。だけど100m走で若い人に勝つのは難しい。年齢とともに落ちるのは持久力ではなく、瞬発力なんです』と言われて」
「それからローテーションの合間の持久系と瞬発系のトレーニングの割合を真逆にしたら、その年の後半戦くらいから良くなってきて『まだできるな』と」
「勝てなくなったら辞める」
このとき、すでに36歳。
結局、三浦が本当に引退するのはそれから6年もあとのことになる。
悪夢のスタートとなったこの年にも3勝を挙げると、翌年から2015年までの5シーズンで計34勝。長く下位に沈んだチームにおいて、成績の面でもしっかりと投手陣を支えていた。
三浦の中で、引退の基準はただひとつ。
「勝てなくなったら辞める」
そのときが来たのは、2016年シーズンの初登板となった7月11日の中日戦だった。
4回6失点で敗戦投手となったことをもって、三浦は自らに「勝てなくなった」という判断を下す。いささか厳しすぎるようにも思えるが、そこにも独自の美学があった。
「球団にお願いしたら、もう1年やらせてもらえたかもしれないですけど『それじゃ三浦大輔はアカンやろ』と思っていましたから。自分に甘えちゃいけないなと」