錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
世界の“ポスト錦織世代”が大阪に!
錦織圭がジュニア選手に与える好影響。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/10/27 11:30
デビスカップ2016大阪で、錦織に肩に手をおかれて写真に納まる綿貫。この大会では、日本を代表する選手たちと一緒に過ごす貴重な体験を得た。
11年前の錦織少年は「緊張してミスばっか」。
ちなみに錦織は11年前、準決勝で2歳年上のフランス人、ジェレミー・シャルディにストレートで敗れている。はっきりとは覚えていないが、当時の自分の原稿やノートを読むと、錦織は「緊張してミスばっかで……。日本ではやっぱりいいところを見せないといけないという気持ちが強くて、緊張してしまうので、あんまりやりたくない」と言っていたようだ。そういう正直なところは今と重なる。
また、所属するIMGアカデミーから同行していたコーチが「ケイが日本ではプレッシャーを感じると思ったから出場させたんだ。今はメンタルゲームの向上に力を入れているところだから」と話していたのも印象的だった。
このシャルディを決勝でマリン・チリッチが破るのだが、一昨年の全米オープンで錦織とチリッチが決勝に進出したあとは、この「スーパージュニア」の大会関係者も色めき立ったものだ。
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その錦織とチリッチが同じ年にこの大会に出場していた、という触れ込みで大会宣伝にも力が入った。
錦織がシャルディに勝って決勝対決が実現していればなお良かったのだが、それは言ってもしかたがない。
ジュニア世代の活躍がテニスの裾野を拡げる。
ただ、そのときはまだ錦織単体でのフィーバーが強烈すぎて、大阪で開催されるジュニア大会まではメディアや人々の興味も下りてこなかったのではないだろうか。スポーツニュースもバラエティー番組も、錦織の生い立ちから人となりの紹介、関わりの深い人たちの紹介に忙しく、一般的にはあまり馴染みのなかったテニスのツアーの仕組みや賞金といった話題も、あの頃は新鮮だったのだろう。とにかく題材にあふれていたのだ。
あれから2年、錦織はトップ10に定着。それもトップ5に出入りする高い位置をキープし、一気に高まった錦織熱はそのレベルを保っている。
錦織やテニスに関する情報はあいかわらず求められているが、錦織は普段日本にいないためにそうそう生の情報はないし、テニスの一般教養的な事柄の紹介は一通り終わってもいる。
そこで、ようやく次の世代へとターゲットが広がってきたという状況がうかがえる。
単なる錦織人気でなくテニス人気へ、日本のテニスを取り巻く環境を変えることができるかどうか、今が非常に大事なときなのではないだろうか。