炎の一筆入魂BACK NUMBER
ジョンソンが作り、黒田で決定的に!?
広島に「流れ」をもたらした19球。
posted2016/10/25 12:10
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
ぐるり、360度を真っ赤に染めたマツダスタジアムが25年ぶりの高揚感をさらに高めた。パの王者日本ハムを飲み込む盛り上がりは、広島ナインにも「いつもとは違う」緊張感を感じさせた。
「ど緊張でした」
三塁の安部友裕は浮足立っていた。広島が'13年、'14年と2度出場したクライマックスシリーズ(以下CS)はメンバーから外れ、初出場となった今年のCSファイナルステージで8打数無安打。それでも日本シリーズ初戦は「7番三塁」で先発出場した。
だがプレーボール直後、日本ハムの先頭打者・西川遥輝の三塁線に高く弾んだ打球を前進しながら捕って一塁に送球するも内野安打にされた。捕らずに見送ればファウルとなっていた可能性が高い。無理に捕球する必要はなかった。
1死二塁から、芝と土の境目でイレギュラーバウンドして三遊間を抜けていった打球も、普段であれば止められただろう。打球に反応しきれず、1歩目が出ず、動きが硬かった。止めても一、二塁だったが、状況は一、三塁と悪化した。
流れが大きく結果を左右する短期決戦。広島の重苦しい空気は見て取れた。
ジョンソンのクールと強気がチームを救った。
チーム、そして安部を救ったのは、マウンド上でクールな表情を崩さなかったクリス・ジョンソンだった。
大谷翔平とともに、日本ハムに流れを持ち込むカリスマ4番の中田翔と対峙。外角のボール球を見せ球に、内角球で強気に押した。特にカウント1-1から内角に投じたカットボールが効果的だった。1球、外角のボール球を挟み、最後は緩いカーブで空を切らせた。
続く陽岱鋼にも、1ボールから徹底して内角を攻めた。勝負どころで球威、切れが増した。制球ミスもない。中田の空振り三振で一塁走者が二塁に進塁して二、三塁となったことで、セットポジションからノーワインドアップに切り替えたことも味方にした。