F1ピットストップBACK NUMBER
113戦で表彰台未経験だけど実力派。
ヒュルケンベルグが惜しまれつつ移籍。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2016/10/23 08:00
フォース・インディアではチームとも良好な関係を築いていたヒュルケンベルグ(左)。
今年のモナコGPは最大のチャンスだった。
では、なぜ表彰台に上がることができないのか。レースの結果を左右するのは、ドライバーの速さ以外にもいくつかの要素が絡み合うためだ。そのいい例が今年のモナコGPだった。5番手からスタートしたヒュルケンベルグだが、ピットストップ戦略が機能せず、失意の6位に終わった。2つ後ろのポジションからスタートしたチームメートのセルジオ・ペレスが3位表彰台を獲得していただけに、レース後ヒュルケンベルグは珍しく語気を強めた。
「最初のピットストップのタイミングが間違っていたと思う。あそこでポジションを落としてしまい、さらにトラフィックにはまってしまって、僕のレースは事実上終わった。今日は表彰台に上がれるだけのペースがあっただけに、正直とてもイライラする」
チームもそのことは認めている。だからこそ、彼らはトップチームへ行くチャンスが訪れれば、その決断を尊重することにしていた。ルノーへの移籍の申し出を受けたとき、フォース・インディアはヒュルケンベルグを残留させる権利を行使しなかったのである。それはヒュルケンベルグの未来を考えた結果だった。
フォースインディアの愛にあふれたコメント。
「われわれは5年間ともに過ごした。ニコは素晴らしい友であり、チームの成功に大きく貢献をしてくれた。彼が類まれなるドライバーであることは、彼がこのチームに在籍しただれよりも多くのポイントを獲得したことが如実に物語っている。ニコが去ってしまうのは本当に寂しいが、われわれは彼が新しいチャレンジを始めたいという決断を下したことを邪魔したくない。フォース・インディアの全員が、ニコの今後の活躍を願っている」
ヒュルケンベルグもそんなチームに感謝した。 「今年の残りのレースでは、フォース・インディアがコンストラクターズ選手権4位の座を確保できるよう全力を尽くす。素晴らしいチームとのラストシーズンを最高の形で締めくくりたい。新しいチャンスに挑戦する機会を与えてくれたフォース・インディアのためにも……」