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113戦で表彰台未経験だけど実力派。
ヒュルケンベルグが惜しまれつつ移籍。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2016/10/23 08:00
フォース・インディアではチームとも良好な関係を築いていたヒュルケンベルグ(左)。
100戦を超えて表彰台経験がないのは4人だけ。
ヒュルケンベルグは2010年にウイリアムズからF1デビューしたものの、当時のウイリアムズのマシンは戦闘力が低く、思うような成績が残せないまま、わずか1年でシートを失う。さらに翌年にはマネージャーだったウェバーとも別離。鮮烈なデビューを果たし、その後トップドライバーへの階段を一気に駆け上がっていったシューマッハーとは、異なる道を歩むことになった。
そのキャリアの中でももっとも差がついてしまったのが、表彰台だ。シューマッハーがデビューからわずか8戦で表彰台に上がり、18戦目に初優勝したのに対して、ヒュルケンベルグは優勝はおろか、いまだに一度も表彰台に上がった経験がない。
10月23日のアメリカGPで114戦目を迎えるヒュルケンベルグ。100戦以上レースをして表彰台を獲得したことがないドライバーは、長いF1の記録でもヒュルケンベルグ以外に3人しかいない。エイドリアン・スーティル(128戦)、ピエルルイジ・マルティニ(118戦)、フィリップ・アリオー(109戦)。
デビューイヤーにポールポジションを獲得した実績。
しかしポテンシャルという点では、ヒュルケンベルグはこの3人とは明らかに異なる。それはポールポジションを獲得していることである。デビューイヤーの2010年、第18戦ブラジルGPでのポールポジション獲得は、雨がらみだったとはいえ、衝撃的だった。
それはウイリアムズのポールポジションが'05年以来5年ぶりだったことでもわかる。さらにルーキードライバーのポールポジション獲得は'07年のルイス・ハミルトン以来の快挙だった。
かつてシューマッハーなど一流ドライバーと仕事をした経験がある元ブリヂストンのエンジニアで、現在ヒュルケンベルグが所属するフォース・インディアでタイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニアに就いている松崎淳も「ニコの予選時の走りは、間違いなくトップドライバーに匹敵します。おそらくいまメルセデスAMGのマシンに乗ったら、ハミルトンといい勝負をするでしょう」と絶賛するほどである。