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オカダ・カズチカ「ひらめき」の勝利。
1.4東京ドームは、オメガとの心理戦へ。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2016/10/17 08:00
棚橋、内藤に勝っているケニーに対して、「2人に勝ったからオカダに勝てるという甘い考えはやめてほしい」とコメントしているオカダ。
オメガ「お前には特別な何かがない」
2人は、シングル初対決となる。ユニットを越えた1対1の“男の対決”だ。
オメガが自虐的に続けた。
「オカダは背が高いし、ハンサム・ヤングマンだ。ファンにも愛されている。俺のようにケガもしたことがない。(中略)でも、お前には特別な何かがない。ハートが欠けている。感情がない。情熱がない。ハングリーさがない。オレはケガの痛みと自分と戦う孤独を抱えて、逆境から這い上がってきたんだ」
オカダが否定することなく、さらっと返す。
「ハングリーさ……ないかもしれないですねえ。なぜなら、全部自分の思ったようにできてしまうから。でも、それは自分が欲していたものだから、もし、経験させてくれるなら経験させてほしいですよ」
オカダは感情表現抜きで戦い続ける王者なのか。
オメガの指摘はほとんど正しい。オカダに足りないものは、外に向けての感情表現だけだ。しかし、このやり取りから、オカダがそれを本当にほしいと思っているとは思えない。オカダが泣いたのは2015年1月4日に棚橋に負けた時だけだ。
もしかしたら、オカダは感情表現抜きで、強すぎる王者として戦い続ける覚悟なのかもしれない。
オカダはアスリートとしての身体能力もスキルもパーフェクトに近いだろうが、ポーカーフェイスを決め込んで、あまりにも淡々と、こともなげに試合を進める。それが、今のところファンの心に強く響いていないのは事実だけれど。
オメガはまだしゃべり足りないようだ。
「この戦いは、オレのことを体が小さい、ジュニアヘビー級止まりのレスラーだと評価し、チャンピオンにはなれないと評価した人たちとの戦いだ。オカダを倒して、それを涙の雨に変えてやるよ」
オメガは、ドームの真ん中でIWGP王者になる瞬間を思い浮かべたのだろう。
「オレはベスト・バウト・マシーン。オレくらい魅せられるレスラーは日本にはいないだろう。オレは新日本のMVPであって、それは日本のMVPであって、ああ……世界のMVPだってことさ」