球体とリズムBACK NUMBER
世界が怖れる大坂なおみの超パワー。
セリーナ後、女王の座はいまだ空席。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2016/09/26 17:00
セリーナ・ウィリアムズを上回る体格を持つ大坂なおみは、次世代女王の資格を有する1人だ。パワーの優位は、いつだって裏切らない。
最後にかならず「おやすみー」と言って会見を去る。
でも、とも思う。こんな一般的な考えは彼女にはあまりそぐわないことかもしれない、と。
「Honestly(正直に言うと)、この試合で考えた(の)は、焼肉食べたいなあってこと」
準々決勝後の会見、最後の質問への回答だ。質問は、「あなたの守備は成長していると思いますか?」だった。部屋が爆笑に包まれたのは言うまでもないが、たぶんウケを狙っていたわけでも、相手に敬意を払っていなかったわけでもないと思う。天然の、極めて特別な資質は色んな形で表に現れるのだろう。
日本女子テニス界に現れたとてつもない才能は、開花の段階に入っている。最後に必ず「おやすみー」と言って会見場を後にするなおみちゃん(本人の希望呼称)は、これから僕らをどれほど驚かせてくれるだろうか。セリーナ・ウィリアムズがついに王座を降り、上位も混沌としてきた女子テニス界。そこに大坂が食い込んでいったとしても不思議はない。