球体とリズムBACK NUMBER
世界が怖れる大坂なおみの超パワー。
セリーナ後、女王の座はいまだ空席。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2016/09/26 17:00
セリーナ・ウィリアムズを上回る体格を持つ大坂なおみは、次世代女王の資格を有する1人だ。パワーの優位は、いつだって裏切らない。
クルム伊達公子以来の決勝進出。
実際、昨年の東レ・パンパシフィックオープンで大坂はかなり大味なプレーを披露していたが、今年は精度の高まりを示していた。そして父のレオナルドさんも「予想していなかった」という決勝に到達。日本人選手の決勝進出は、1995年のクルム伊達公子以来の快挙となった。
「彼女は偉大な選手になるわ。ランキングをものすごい早さで上がってきているしね」と優勝したヴォズニアッキも同調し、大坂の憧れの存在でもある女王(厳密に言えば今は2位)セリーナ・ウィリアムズも「すごく危険な存在」と認めている。
プロ野球のヤクルトの野村克也元監督は投手の新人を獲得するとき、「球の速い選手を取るように」とスカウトに指示していたという。それは天性の部分が大きく占めるものだからだ。変化球やコントロールは後からでも覚えられるが、速いボールを投げるには、稀有な素質が必要となる。テニスもそこは同じだろう。
現時点では、まだ精神面には波がある。
もちろん現時点では課題もある。精神面が特に重要となるテニスにおいて、トップ中のトップの扉を開けるにはメンタルタフネスが不可欠だ。先の全米オープンでは3回戦のマディソン・キーズ戦の3セット目で5-1とリードしながら、「メンタルが崩壊して」(本人談)逆転負けを喫している。また今大会では全般的に立ち上がりに難を見せ、序盤になかなかファーストサーブが入らない試合が多かった。
さらに決勝では、ファーストセットの途中で相手が医療タイムアウトを取ったときに、「気にしすぎた」ことを自分でも認めており、結局そのセットは競り負けた。そして2セット目の途中には、なかなか入らないビッグサーブを諦めて、置きにいくようなサーブを打つようになり、逆に持ち味が消えてしまっていた。ただし、経験を重ねて自信を身につけていけば、そうした場面にもうまく対処できるようになるのではないか。