濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
名古屋を格闘メインストリームに。
Krushが変える「地方興行」の概念。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2016/08/28 08:00
名古屋大会を大成功に導いた佐藤嘉洋実行委員長(右)は武尊とともに充実の表情を見せていた。
世界王者の武尊も全力で迫力と興奮を伝えた。
休憩前に行なわれたエキシビションマッチも、本戦に負けない盛り上がりを見せた。名古屋のリングで初めて対峙したのはK-1 -65kg世界王者ゲーオ・ウィラサクレックと-55kg世界王者の武尊。ただでさえ豪華な顔合わせだが、武尊は“顔見せ”で終わらせるつもりはなかった。
「せっかくゲーオとやれるんだから」と“追い込み”練習でコンディションを仕上げてリングに上がり、ゴングが鳴るといつもの試合同様の激しい攻撃を見せたのだ。エキシビションとはいえ、武尊にとっては“王者対決”であり、ファンに「東京でやってる試合」さながらの迫力と興奮を届けようとしたのだ。
ここでもやはり、東京と同じ“最前線”の熱が地方に持ち込まれたことになる。ちなみに名古屋でも武尊の人気は絶大。昨年大晦日の『RIZIN』参戦や相次ぐテレビ出演の効果もあってか、サイン会には長蛇の列ができていた。会場入口には、午前中から“入り待ち”のファンがいたそうだ。
どんな土地でもファンが見たいのは最前線の闘い。
どんな土地であれ、やはりファンが見たいのはトップファイターによる最前線の闘いだ。主催者側から“地方だからこれくらいで”という思惑が透けて見えた瞬間に、ファンは冷める。これまでもKrushの地方大会は“最前線”と“地元選手への感情移入”のバランスが高いレベルで取れていたが、今大会でさらに一歩、踏み込んだのではないか。
佐藤氏は東京で、あるいは世界での闘いを常に肌で感じてきた。その一方で、地方の選手やファンの思いも知っている。そんな彼だから見える理想が、この大会には込められていた。
ただ、来年も実行委員長を務める予定の佐藤氏にとって“年に一度の名古屋大会”を盛り上げることは決してゴールではない。