欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
“なぜか決める”ミュラー不発が象徴。
個の力が欠如したドイツEURO敗退。
posted2016/07/08 16:30
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph by
REUTERS/AFLO
フランス、ポルトガル、ウェールズとは異なり、ドイツが擁していなかったのが独力で敵の守備ブロックを突き崩し、フィニッシュまで担えるスーパースターだ。
周知のとおり、フランスはグリエスマン、ポルトガルはロナウド、ウェールズはベイルがビッグプレーを連発し、EURO2016での母国の上位進出に大きく貢献した。
参加24か国で最も高いボール支配率(63%/準決勝終了時点)を記録しながら、肝心のフィニッシュの局面で輝く主役が一向に現れず、ビッグチャンスを何度となくフイにしたドイツは、さながら“イチゴのないショートケーキ”のようだった。
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2年前のブラジルワールドカップで頂点に立ったチームも、ロナウドのような異次元の点取り屋を擁していたわけではない。それでもコンスタントにゴールを挙げられたのは、自陣のスペースを消すことを念頭に置き、守りをガチガチに固めてくる相手が少なかったという戦術的な要因に拠るところが大きかった。しかし今大会では、準決勝で立ちはだかったフランスに加え、イタリアや北アイルランドも採用してきた“リトリート戦術”に大いに苦しめられることとなった。
15本打っても1本しか入らなかったドイツのシュート。
堅守の攻略にてこずった様子は統計にもはっきり出ている。
スコアレスドローに終わったポーランド戦を除き、全試合で相手を押し込む時間が長かったドイツが、1ゴールを挙げるのに要したシュート数は1試合平均15本を上回った。
約8本のフランス、約7本のウェールズと比べれば、いかにフィニッシュの効率が悪かったかが窺える。
ドイツと同程度(約14本)のポルトガルは負ければグループステージ敗退だったハンガリーとの一戦に加え、準決勝のウェールズ戦でも、エースのロナウドがきっちりとゴールという結果を残した。個の力でチームの問題点を覆い隠したわけだ。繰り返すが、ドイツにはその個の力が足りなかった。