オリンピックへの道BACK NUMBER
親族、選手への“傲慢”な報道姿勢。
リオ五輪中継でも繰り返されるのか。
posted2016/07/12 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JMPA
リオデジャネイロ五輪の開幕が間近に迫っている。
大会のときは、現地に取材に出向いているため、基本的に日本でどのように報道されているか、テレビでどのように取り上げられているのかを知ることはできない。あとから聞くしかないが、そのとき、「このように伝えられていた」と、よく耳にする内容がある。
先だってレスリング女子日本代表、吉田沙保里の母・幸代さんに話をうかがったが、あらためて、これまで耳にした話を思い出すことになった。
ロンドン五輪でのことだ。
会場にいた幸代さんは、吉田の決勝を観られなかったと言う。
なぜか。
吉田の決勝戦、カメラに囲まれて観られずじまい。
「周囲を囲まれてしまったもので……」
テレビのカメラが、そのスタッフたちが周囲を囲んでしまい、視界をさえぎられていたのである。
それは瞬間的なことではなく、試合中から試合後まで続いた。
この決勝は、吉田本人ものちに語っているが、強く記憶に刻まれる試合であり、おそらく今後も薄れることのない試合であった。ロンドンでは父の栄勝氏がコーチとしてセコンドについていたが、決勝の後、吉田はマット上で父を肩車した。その栄勝氏は2014年に逝去した。それもあって、忘れがたい試合となった。
父と娘の光景も、幸代さんは見ていない。
「『すみません』と言っても、もう全然。観たかったんですけどね。日の丸を掲げて、ランニングもしましたよね? そういうところも観られませんでした。いつもそうなんですけどね」
苦笑しつつ、語った……。