野球のぼせもんBACK NUMBER
実は王貞治も評価した逸材だった。
ホークス城所龍磨が打撃で開眼!
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/05/25 07:00
5月18日の日本ハム戦、7回に代打で打席に入った城所は、実に9年ぶりの本塁打となる3ランを放った。試合後には「やってもうた」のコメントも。
イチローも言っていた「遠回りすることが一番の近道」。
パワーを生むのは「スピード×筋量」。筋肉量が落ちてもスピードが上がれば、結果的にパワーは上がると考えた。体の切れ味を増すために、瞬発系のトレーニングを重点的に行った。走るのも全力。「きつくて吐いたこともありました」。昨年81キロだった体重を現在75キロまで絞った。
ただ、筋肥大のトレーニングも無駄ではなかったと言い切る。
「ボクが若手の頃は技術練習がメインで、体を強くするトレーニングをあまりやっていなかった。遠回りをしてしまったけど、基礎体力や基礎の筋肉がついたおかげで、今の考え方の練習もできたんです。イチローさんが『遠回りすることが一番の近道』だと言ってましたよね。僕もそう信じています」
思えば、肝心のバッティングでも遠回りしてきた。
なんでも器用にこなせることがアダに。
もともと運動神経が突出しており、小学生時代のエピソードでは「野球もサッカーもやっていた。サッカーを選んでいても、Jリーガーになっていたと思います。ゴン中山に憧れていました」という。若手の頃、当時の王貞治監督が「ウチの若手で一番飛ばすチカラがあるのは城所だよ」と言っていたのもよく覚えている。
しかし、何でも器用にこなせるのがアダとなった。結果を出せなければ、すぐに違うものを追い求める。我慢がない。能力があるからある程度はできる。だが、結局はどれも中途半端。1つの形に拘れないまま時間だけが過ぎていった。
「藤井(康雄)コーチをはじめ周りの指導者の方のアドバイスを素直に聞き入れて、1つの道を突き進もうと腹をくくれたのは、ようやく一昨年あたりからです。それからずっと同じ考えでやってきたのが、今の結果に繋がっていると思っています」