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錦織圭、全仏の初戦は難敵を一蹴。
軌道と時間を自在に操るクレー戦術。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2016/05/24 11:30

錦織圭、全仏の初戦は難敵を一蹴。軌道と時間を自在に操るクレー戦術。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

ジョコビッチ、ナダルとは決勝まで当たらないドローを引き当てた錦織圭。初グランドスラムは確実に視野に入っている。

度重なる順延で、錦織に焦りが。

 第1セットは筋書き通りのラリーに終始した。バックハンドを中心に攻め、なおかつ積極的にコースを変えた。左膝を痛めているボレリには淡泊なミスも目立った。第2セットの3-0までは錦織のひとり舞台だった。

 しかし、ここからの数ゲームが転換点となった。先行して少し気が抜けたのか、ブレークバックを許し、追いつかれる。さらに、ぽつぽつと落ちていた雨粒の勢いが増し、ゲームカウント5-4で中断。3時間近く、試合は再開できなかった。

 さらにセットカウント2-0、第3セットの2-1で再び中断、結局順延となった。

 翌日も朝から雨。第1試合の開始が遅れ、第2試合に組まれた錦織-ボレリ戦の再開は午後5時過ぎまでずれ込んだ。

 きまぐれな天候にこれだけもてあそばれるのは、やはり因縁の相手だからなのか。そして再開後の錦織はプレーに精彩を欠き、相手のペースとなった。

 試合後、錦織は「焦って、早く終わらせようとしている部分もあった」と話した。それでも、4-3から相手のサービスゲームをブレーク、そのまま押し切った。

錦織の安定感が、相手にギャンブルを強いた。

 100点満点の前半に比べ、天候に妨害されたとはいえ失速した後半は、少し辛口の採点にならざるをえない。

「(再開後の)出だしは硬さもあった。風もあり、このコンディションで100%のプレーは難しい」

 錦織はそう話した。ただこれは、100%を割り込む出来も、本人は納得していると解釈できる。実際、錦織危うしと思わせる時間帯は皆無だった。

 過去2戦の芝とは条件が異なり、ボレリには膝の故障というハンディもあったが、力の差は歴然だった。ボレリが押していたのは、リスクを負ったショットがラインの内側にたまたま収まったからだろう。錦織の安定したプレーが、相手にギャンブルを強いたのだ。

 全仏の前哨戦は準優勝、4強、4強の好成績で乗り切った。バルセロナでは決勝でラファエル・ナダルに敗れ、マスターズ1000のマドリードとローマではともに準決勝でノバク・ジョコビッチに敗れたが、取りこぼしはなく、抜群の安定感を示している。

【次ページ】 過去最高のクレー戦術で「じっくり攻める」。

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