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コース上で「どうしてもキレちゃう」。
岩田寛の“精神修養”は今も進行中。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2016/05/22 10:30

コース上で「どうしてもキレちゃう」。岩田寛の“精神修養”は今も進行中。<Number Web> photograph by Getty Images

ゴルフはメンタルスポーツというが、岩田はそれを痛感していることだろう。「キレない」方法はどこにあるのか。

力はあるからこそ「キレちゃダメ」。

 事前に案じていたゴルフの調子が、必ずしもスコアに直結してきたわけではない。むしろ岩田にとっては“嬉しい想定外”の方が多かったのではないか。

 裏を返せば、岩田は技術的に万全な状態でなくとも、好成績を出せる力もあるということだ。彼自身の証言がそう証明している。だからこそ「キレちゃダメなんですけどね……」

 岩田はいま、その“精神修行”に必死だ。

「サッカーの大久保嘉人って知ってる?」と、いきなり切り出したことがあった。J1最多得点記録を持つ点取り屋のニュースを、インターネットで目にしたらしい。「彼はPKの時に、外れると思って蹴るんだって。そうすれば失敗してもショックが少なくて済むから、次のプレーに切り替えられる」

 岩田にとって実に有益そうな考え方だ。一旦は「でも、ゴルフには当てはまらないかもしれない。なにせオレには当てはまらない。オレは大久保じゃない!」と弱気になるのだが、「いかに(ミスショットを)打ったあとのガッカリさをなくすかが大事」と、他競技からもキレない術を学ぼうとする。

なんだか騒がしい同組の選手を他山の石に。

 4月末、ルイジアナ州の試合では同伴競技者から刺激を受ける機会があった。予選同組になったジョーダン・ペインという選手は、試合開催週の月曜日に行われる予選会を通過して出場した。普段は米国のミニツアーが主戦場で、PGAツアーはキャリアで2試合目だった。初日からひとり緊張感を漂わせ、ひとつのプレーに対してのリアクションも大きかった。そして、ダントツの最下位で予選落ちした。

 なんだか騒がしかった、初見の選手とのプレー。そこにも岩田は「むしろ勉強になりましたよ。『こういう選手のほうが応援したくなる』と思った」と言うのだ。冷静と情熱のあいだ、ネガティブとポジティブのあいだを一瞬ごとに行ったり来たり。不振続きの時間に、ただ身を委ねているわけではない。

「2年前から調子が悪いと言っていたのが、気持ちまで蝕んでいたのかなと。まずはそういうところから治して行こうと思う」

【次ページ】 「芝への対応? 変わんねえっす」

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岩田寛

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