ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
コース上で「どうしてもキレちゃう」。
岩田寛の“精神修養”は今も進行中。
posted2016/05/22 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
「分からないですね……迷走中です」
この短い言葉を吐く間に、どれだけの溜息が刻まれたことだろう。
昨年秋、米国PGAツアーに本格参戦を決めた岩田寛。35歳で迎えた春は、悩みの真っ只中にいる。2月のAT&Tペブルビーチナショナルプロアマでは、最終日最終組をフィル・ミケルソンと回り、初優勝の可能性をサンデーバックナインまでつないで4位に入ったものの、その後の成績が振るわない。
4月に入ると、5試合のうち4試合で予選落ちを喫した。ポストシーズンのプレーオフシリーズに進出し、来季のシード権を確保するためには、8月のレギュラーシーズン終了までにポイントランキングで上位125位以内に入る必要がある。岩田は5月15日時点で134位に後退した。
昨年の全米プロ選手権では、メジャー最少ストローク記録である63を叩き出した。下部ツアー選手との入れ替え戦も勝ち抜いて、レギュラーツアーに辿り着いたのだから、ここで生き残れるだけの実力は備えているはずだ。
だが岩田は素直に、自虐的に、そして的確に自分の弱点を指摘する。「どうしても試合中にキレちゃう。オレはメンタルが弱いんだ」――。
ミスが続くと、プレーが明らかに投げやりに。
ミスが続くと、試合を投げてしまう。岩田のラウンドにはそんな光景が数多くある。
ショットでOBを打ち、素振りも一切しないまま打ち直すこと。時にクラブを怒りに任せて振り下ろすこと。
グリーン上での“分かりやすい”シーンが、パットのラインを読むときの動作だ。ゴルファーはボールとカップの延長線上から転がりを予想するほか、上空から見たときにボールとカップ、そして自分自身が、三角形になるような位置から目を凝らして傾斜を探る。パットの名手である岩田は、このルーティンが普段は丁寧なのだが、キレてしまえば、途端におざなりになってしまうのだ。
ここ最近、彼は内容が伴わずスコアも振るわないラウンドを終えると、何度かこう繰り返した。「2年くらい前はこんな風じゃなかった」