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森重真人はなぜ連戦を乗り切れるか。
疲れを「頭で負かしちゃう」方法論。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/05/03 10:00
今季はACLとの二足の草鞋も響き、リーグでは13位と出遅れているFC東京。キャプテンとして、DFリーダーとして森重の力が問われる。
彼はメンタルではなく「頭」と言った。
メンタルと言わず、森重は「頭」と言った。
体の疲れを、頭でカバーするとは。
「試合が終わったら、もう次の試合に向けての準備を始めます。たとえば3日前に何をするか、2日前、1日前にという感じで、疲れや調子を自分の頭でコントロールしていくようなリズムを自分なりにつくっていくんです。もちろん今週も頑張れたからと(試合のあとは)甘いものを多めに食べたりもしますよ。でもスイッチを一度切っているようで、切っていない。根本的なスイッチを切らないようにしているんです。
連戦で逆に一度オフがあると、自分では抜いていないつもりでも頭が抜けちゃったりしてしまうこともある。だから自分でもなるべく頭は休まないようにしています。スイッチを切らさないように」
連戦中に右足首の軽いケガもあったが、大事には至っていない。試合のパフォーマンスも大きな波はない。終わった試合を極力振り返らず、次の試合に向けての準備を考えて進めていくことが、「疲れ知らず」を生み出していた。
“続けられないタイプ”が編み出した独特の調整法。
過去、いろいろと試しながら状況に応じた自分の調整法を確立してきた。
試合までの1週間、ストレッチを同じメニューにすることで体の張りや異変に気づきやすいようにする。環境が違ってもやれるように、器具を使わなくてもいい筋トレにする。睡眠時間は8時間を確保。疲労を感じたら、脂身の少ない鶏肉を中心にした食事にする、などなど。
彼は“続けられないタイプ”と自己分析しているだけに、きちんと続けられるような無理のない調整法を心掛け、その積み重ねで日本代表のレギュラーに定着するまでになった。
今回も休みがなければ、休みがないなりに調整していく。対応力があればこそ、である。そして導き出した答えが「根本的なスイッチ」を切らない、彼独特の調整法だった。
しかしこうやって連戦が続くと、精神衛生上、微妙な影響が出てくることはないのだろうか。サラリーマンの友人と同じようなしかめっ面で尋ねてみたが、森重は筆者と同じ顔をしなかった。
「いや、頭のところで(疲労を)負かしちゃえば別に。(連戦の続く調整のほうが)むしろ楽というところもあるんです。試合が1週間空いて、途中にオフが入ると今度は体を起こさなきゃならなくなるのでオフ明けがきつくなったりする。だから連戦とはいっても、やることをやっておけば個人的には特に苦になっているわけじゃないんです」