沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
出走前からレコードはわかっていた?
高松宮記念が超高速で決着した理由。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/28 11:15
ビッグアーサーは父がサクラバクシンオーという、“いかにも”なスプリント専門馬なのだ。
「生粋のスプリンター」しか生き残れない舞台だった。
メンバー最速の1分6秒7の持ち時計('15年オパールステークス)があったビッグアーサーにとっては、まさにおあつらえ向きの馬場であり、展開だった。
2012年にリニューアルオープンしてからの中京芝コースは、長くなった直線に坂ができ、さらにこの時期は芝が傷んで重くなるため、スピードだけではなくパワーと耐久力も求められるようになっていた。そのため、'12年から昨年までの高松宮記念の連対馬8頭すべてが1200mより長い距離でも勝っていた馬だったのだが、今回初めて、1200mでしか勝ち鞍のない馬が勝った。
今年の高松宮記念は、「生粋のスプリンター」を選抜する舞台になった、ということだろう。
終わってみれば、上位3頭は1、2、3番人気の順。
初騎乗でビッグアーサーの力を見事に引き出した福永は、昨年10月の落馬事故からこの春復帰し、先週は2日連続で重賞を勝っていた。これがジャスタウェイによる'14年3月のドバイデューティフリー以来2年ぶりのGI勝利となった。
ドバイでも、日本馬が次々と好成績を。
さて、26日土曜日の夜から日曜日未明にかけてドバイのメイダン競馬場で行われたドバイ国際競走では、日本の馬が素晴らしい成績をおさめた。
まずは、UAEダービー(ダート1900m、GII)を武豊のラニ(牡3歳、父タピット、栗東・松永幹夫厩舎)が優勝。5月7日のケンタッキーダービー(米チャーチルダウンズ、GI)の優先出走権を獲得した。順調に行けば、武にとって、また日本馬にとっても1995年にスキーキャプテン(14着)で参戦して以来21年ぶり2度目のケンタッキーダービー出走となる。
UAEダービーを日本馬が制したのはこれが初めて。出走した7頭のうち3頭が日本馬だったので日本のレースに近くなったというアドバンテージがあったにしても、厳しいアウェーで結果を出したことは称賛に値する。
ラニは、スタート直後につまずきながらも向正面でポジションを上げ、直線で競り勝った。前走、東京ダート1600mのヒヤシンスステークスでは、後方から3コーナーで一気にマクって5着。しかし、途中で動く競馬を経験したことが、ここで生かされたわけだ。こんなふうに武の騎乗は、次のレースや数レース後になって意図がわかる、というケースがままある。
そして、ドバイターフ(芝1800m、GI)をライアン・ムーアが乗るリアルスティール(牡4歳、父ディープインパクト、栗東・矢作芳人厩舎)が優勝。GI初勝利を遂げた。
ドバイシーマクラシック(芝2410m、GI)では、ドゥラメンテがレース前に右前脚を落鉄し、そのまま走ってポストポンドの2着に惜敗。負けて強しで、凱旋門賞がより楽しみになったと同時に、「裸足」でなければ……と悔やまれる内容だった。ラストインパクトが3着、ワンアンドオンリーが5着と健闘した。
ファンにとっては、なかなか賑やかで、充実した週末になった。