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プレミアで“大空翼”になった岡崎慎司。
2度目のオーバーヘッドは風邪のお陰?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYusuke Mimura
posted2016/03/17 10:30
岡崎のオーバーヘッドは、ドイツの新聞一面を独占した。ピッチをボールが左右に飛び交う間もスペースを探し続けていたことが報われた形だ。
バーディーに負けない歓声、そして笑顔。
「Shinji!」
「Okazaki!」
「岡崎さん!」
名前の呼び方も、声をあげたファンの国籍も様々だったが、バーディーに勝るとも劣らない歓声がわきあがった。
英国紳士にふさわしい細身のスーツに身を包んだ岡崎が、ファンのもとに歩みを進めていく。写真撮影やサインの求めに応じる。風がつよく、体感温度は氷点下に近い。それでもカメラを向けられれば笑顔を作った。
岡崎のかたわらには2人の警備員。1人は岡崎のカバンを持っている。そしてもう1人の警備員は、万が一にも岡崎に危害を加えるファンがいないかどうか、目を光らせている……はずだった。
でも、彼は笑顔だった。ファンと岡崎のやりとりを見ながら、警備員は笑顔を浮かべていた。
安住の地であるマインツを捨て、戦いの場をレスターに移したのは、自身の成長のため。だから、岡崎はゴールを求める。そこにあるのは個人的な欲望にも見える。
でも今は、自分のゴールが数えきれないほどの人たちを笑顔にできる環境がある。自分のための戦いが、他人のための戦いになる。岡崎は、幸せを運ぶストライカーとして戦っているのだ。