欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「自分を変えてプレーする必要が」
権田修一が語るSVホルン移籍の真相。
posted2016/02/10 11:50
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Itaru Chiba
オーストリアの小さな街・ホルンには、ホテルも数えるほどしかない。2月中旬に妻と長男が来るまでの間、権田修一は一人、練習場から近い小さなホテルに宿泊している。
「ここのレストラン、食事が美味しくて。その他にも美味しい店が何軒かあって、不自由していないですよ」
権田はホテルでの日の昼食に、温かいスープとチキンを選んだ。寒さが厳しい冬の時期は練習場の状態が悪く、チームはグラウンドを求めてウィーンや他の街まで赴くことも珍しくない。
「これを食べたら、みんな車に分乗して30分先のグラウンドまで行かないといけないんですよ」
SVホルン加入会見を翌日(1月29日)に控えていたこの日も、隣町でトレーニングが予定されていた。
10年間、日本の首都にあるクラブで、恵まれた環境の中でプロとして生活してきた。そんな立場を捨て、欧州中堅国の3部リーグに身を投じた。
“都落ち”。誰もがニュースを耳にした時、そう感じたことだろう。
「一度、サッカー人生は終了したと思っています」
昨年、FC東京で一度は選手として身体も心も燃え尽きてしまい、試合からも遠ざかった。本人が苦しかったのはもちろんのこと、チームと仲間にも迷惑をかけてしまった。
昼食を食べながら、変化を感じることができた。権田は再び、前を向き始めている。彼がこの苦しい期間を経て気付かされたのは、自分が変わること。そのために環境も変え、一からスタートを切る必要があった。「一度、サッカー人生は終了したと思っています」。その言葉も決してオーバーな表現ではないほどの覚悟が、今の彼の奥底には隠されている。
自らを省みた。そして、これまでの自分を吹っ切り、新たな未来に向けて視野を広げ始めた。
新天地では、固定概念を打ち破る戦いがここから始まろうとしている。そもそも先入観にとらわれていては、オーストリア3部にいる自分をそのまま否定することになる。
今、権田はあらゆる意味で、サッカーの本場・欧州の芳醇な土壌と深みを体感している。