“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
2度のU-19選手権敗退の屈辱を越えて。
遠藤航、キャプテンとして掴んだ五輪。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/02/02 10:50
2度世代代表としてアジアで味わった屈辱を越えて、遠藤のこの笑顔がある。
キャプテンとして再び臨むが……。
「前回のような悔しい思いは絶対にしたくない。アジアは本当に厳しいが、僕だって2年前より成長できているし、チームも成長している。だからこそ、強い気持ちを持って挑みたいし、前回を経験している僕が周りにいい影響を与えて、一丸となって戦いたい」(遠藤)
キャプテンとして、CBとして、そして唯一の前回大会経験者として。強烈な責任感を持って臨んだ大会だった。しかし、グループリーグ初戦のイラン戦でいきなり2失点を喫し、0-2の敗戦。第2戦のクウェートには1-0で勝利し、第3戦のUAE戦は0-0のドロー。ギリギリの2位で何とかグループリーグを突破したものの、準々決勝のイラク戦でバイタルエリアを面白いように攻略され、1-2の敗戦。気持ちとは裏腹に、またしてもU-20W杯の出場権を失う屈辱を味わうことになってしまった。
試合後、多くの選手がうつむきながらバスに乗り込む中、遠藤の姿が無かった。バスは彼を残し、会場を後にした。一気に静まり返るスタジアム。そして、1時間以上経過した後、ドーピング検査を終えた遠藤が姿を現した。表情に覇気はなく、青ざめていたが、敗戦から時間が経ったためか、冷静に落ち着いた声でこう口を開いた。
「分かっていたのにチームに伝えきれなかった」
「2回もこんな経験をしたくはなかった……。悔しいです。前回を経験している者として、もっとアジアの怖さというか、ひとりひとりが声を掛け合って、集中力を保たないとどういう結末になるかを、分かっていたのにチームに伝えきれなかった」
この言葉通り、遠藤がチームに示そうとした想いは、周りに届かなかった。逆に、周りの選手からの声があるわけでも無く、どの試合もピッチ内は静かなまま、時が進んでいた。しかも、多くの選手が冷静さを失った状態のままで――。
筆者は初戦から感じていた違和感を、この時はっきりと遠藤に伝えた。「なぜ、声がここまで出なかったのか」と。
「元々僕はそこまで声で盛り上げるタイプではなかった。でも、何とかしようと考えていた。失点をすると、すぐに下を向いてしまう選手が多く、チーム全体として『取り返すぞ』という雰囲気になれなかった。結局は僕の責任でもあります……。(タイでの)1次予選でそれを経験していたはずなのに……」
溢れ出る自責の念。最後は唇を噛み締め、「すみませんでした」と頭を下げ、スタッフの用意した車に乗り込んでいった。