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五輪代表を襲う「またか」の問題。
遠藤航離脱で問われる“余白”の力。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2016/01/08 11:00

五輪代表を襲う「またか」の問題。遠藤航離脱で問われる“余白”の力。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

年末のキャンプで明るい表情を見せるU-23代表と手倉森誠監督。

攻撃陣に豊川、守備陣に三竿を呼んだ理由。

 30日の発表で、手倉森監督は豊川雄太の追加招集を明かした。石垣島で好調さをアピールした鹿島アントラーズのサイドアタッカーが、攻撃のオプション増を担うことになった。

 そして指揮官が最後にメンバーへ加えたのが、三竿健斗だった。U-23日本代表ではDF登録だが、所属する東京ヴェルディではダブルボランチの一角を定位置とする。

「持ち味は相手の攻撃を潰す球際の強さ。身体のぶつかり合いでは絶対に負けないようにしたい」と話す19歳は、とくに中東勢との対戦を意識して抜擢された。グループリーグの第3戦で対戦するサウジアラビア、リオ五輪世代で成果をあげてきたイラクなどは、ロングボールを使ったオープンな展開を好んでくる。日本からすれば「間延びをさせられた展開」だ。数的優位ではなく数的同数で対応しなければならない局面が、おそらくは何度も生まれてくる。フィジカル的に逞しい選手が必要になる。

前園が初戦出場停止だった1996年の記憶。

 手倉森監督がボランチでの起用を想定するのは、遠藤、大島遼太(川崎F)、原川力(同)、矢島慎也(岡山)、井手口陽介(ガンバ大阪)の5人だ。球際に強い遠藤とボールを動かす力のある大島のコンビがファーストチョイスで、原川と矢島は大島と同タイプに分類される。井手口はハードワーカータイプだが、身長171センチとフィジカルを強みにするタイプではない。180センチで空中戦にも優れる三竿が、ボランチの選択肢に加えられた理由がそこにある。

 遠藤のコンディションが万全になれば、キャプテンを最終ラインへ下げて守備に厚みを加え、三竿を起用して中盤の高さを担保する、というオプションも指揮官は思い描く。イジられ役でムードメーカーでもある三竿は、戦略的にも重要な役割を担うかもしれない。

 16カ国がセントラル方式で争う最終予選は、「いかに点を取るのか=勝ち切るか」が重要である。大勝は必要ない。ノックアウト方式の準々決勝以降は、とにもかくにも勝ち上がることが最重要課題だ。

 今回と同じセントラル方式で行われた1996年のアトランタ五輪最終予選で、西野朗監督が率いたチームはどのような戦いを繰り広げたか。グループステージ初戦は、イラクと1-1のドローゲームを演じている。キャプテンの前園真聖が出場停止だったこの試合を引き分けたことで、第2戦以降に希望をつなげることができた。

 オマーンとの第2戦は4-1で大勝したが、UAEとの第3戦は1-0で際どく勝利している。勝ち切ることの大切さを、歴史は示唆する。

【次ページ】 久保、南野、手倉森が共有する「名前の感覚」。

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