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五輪代表を襲う「またか」の問題。
遠藤航離脱で問われる“余白”の力。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/01/08 11:00
年末のキャンプで明るい表情を見せるU-23代表と手倉森誠監督。
久保、南野、手倉森が共有する「名前の感覚」。
昨年12月のイエメン戦とウズベキスタン戦が、スコアレスドローに終わったのはすでに述べたとおりである。ただこの2試合には、欧州でプレーする久保裕也と南野拓実が出場していない。同11月末のキャンプで一部別メニュー調整だった鈴木武蔵(アルビレックス新潟)も、トップフォームを取り戻していなかった。今後の上積みが期待できないなかで、2試合連続無得点に終わったわけではないのだ。
中でも久保と南野への期待は大きい。彼らが欧州でしのぎを削っているだけでなく、欧州で培われたメンタリティに、手倉森監督は頼もしさを感じている。
「昨年9月にヨーロッパで彼らと会ったときに、ふたりとも同じことを話していたんですよ。『海外に居ると、自分の名前を呼ばれる前に日本人って言われる。何かを示したときにようやく、名前で呼んでもらえる』と。結果を残さないと認められない覚悟を持って、彼らは戦っている。それは僕も、レベルは違えど感じたことがあるものなんですよ」
鹿島アントラーズの前身である住友金属在籍時に、21歳だった手倉森監督はブラジルへ留学した。日本ユース代表に選ばれた才能にもサッカー王国の風当たりは冷たく、若き手倉森は「日本人として戦うことの意味」を自らに問いかけた。
「名前で呼ばれない悔しさを感じながらやっていることで、久保も南野も『オレたちは日本人だ』と日々感じていると思う。その気持ちが、国際大会では大事なんです。日本を代表するチームは国民のもので、自分のためよりもまず日本のために戦う覚悟がある人が、日本を代表するチームに選ばれるべきだと思うんです。それは、日本代表でもU-23でも同じです」
A代表経験者がチームに与える好影響。
久保と南野が背負っている覚悟は、彼らだけのものではない。チーム全体に浸透していると、指揮官は感じている。
「彼らの存在は、間違いなく国内組の刺激になっている。航や拓磨(=浅野拓磨)がA代表に呼ばれていることも」
久保と南野が加わる攻撃陣は、昨年12月とまったく違う表情を最終予選でのぞかせるに違いない。試合を重ねるごとにコミュニケーションは深まり、コンビネーションが密接となっていくだろう。