濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大晦日に衝撃を残したRENA――。
“美女”が格闘技の新時代を告げる。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2016/01/07 10:30
飛びつき腕十字固めを決めた瞬間のRENA。見た目が派手な技だが、非常に高度な技術が要求される。
衝撃のMMAデビュー戦を飾った“美女格闘家”。
そしてRENAだ。これまでも“美女格闘家”として注目されてきたシュートボクシング世界女王の出番は、大晦日の第1試合。榊原信行実行委員長は「大晦日の一発目、誰で“掴む”かと言ったらRENAでしょう」と、その意図を語っている。つまり彼女は、新しい大会が作る新しい歴史のスタートを告げる役目をになったのだ。
その役目を、RENAは完璧に果たしたと言っていい。イタリアの強豪キックボクサーであるイリアーナ・ヴァレンティーノとスリリングな打撃戦を繰り広げ、2ラウンドにフィニッシュ。決まり手はなんと飛びつき腕十字だった。以前、雑誌の企画で“修斗のカリスマ”佐藤ルミナから教わり、使ってみたかったのだという。
とはいえ、飛びつき腕十字は不完全に終われば下になるリスクもある技だ。攻防の中で相手に飛びつくという動きそのものにも、かなりの思い切りがいるはず。そういう技を、RENAは初の大晦日、MMAデビュー戦でやってのけ、タップを奪ってしまった。これ以上インパクトのある第1試合はないし、“新しい”としか言い様がない光景だった。
RENAは日本のロンダ・ラウジーになれるか?
テレビ中継を通してこの試合を見た“世間”も反応したようだ。大晦日、彼女のブログは28万アクセスを記録したという。自身を「MMAファイターとしてはまだまだ」だと言うRENAだが、目標は達成できたのではないかという手応えも感じている。
「女子格闘技を世間の人たちに少しでも知ってもらえたら、それだけでも自分の役割は果たせたんじゃないかと思います。女子格闘技にはいい選手がたくさんいます。これからも注目してください」
この大晦日だけでなく、RENAは女子格闘技の祭典と呼ばれる『Girls S-cup』でも、2009年の第1回大会から世界トーナメント3連覇を含め全勝を収めている。それは、大一番での彼女の強さを示すものであり、「女子格闘技というジャンルを背負い、引っ張っていく」という責任感がもたらした結果でもあるだろう。
かつて、UFCは女子部門設立とロンダ・ラウジーの登場によって新たなフェイズに突入した。おそらくRIZINにも、同じことが起こるのではないか。格闘技ファンには女子の試合は当たり前になっているが、世間的には女子MMAはフレッシュなカテゴリー。と同時に、レスリングやサッカーなどで女子スポーツが“スポーツとして”受け入れられる時代でもある。
RENA、それに同じ大晦日にMMAデビューを果たした186cm、90kgの女子柔術家ギャビ・ガルシアの存在と女子MMAというジャンルの新鮮さは、RIZINブレイクの切り札になりうる。