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阪神JFは女王誕生、香港では神騎乗。
国内外3つのGIで日本馬が強さを発揮。
posted2015/12/14 11:40
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
大混戦と言われた今年の2歳女王決定戦。終わってみれば、本命馬の強さばかりが目立つレースだった。
第67回阪神ジュベナイルフィリーズ(12月13日、阪神芝外回り1600m、2歳牝馬GI)を制したのは、クリストフ・ルメールが騎乗した1番人気のメジャーエンブレム(父ダイワメジャー、美浦・田村康仁厩舎)だった。
メジャーエンブレムは内の2番枠から、ルメールが「びっくりした」と言うほど速いスタートを切って先行し、そのまま押し切った。前走のアルテミスステークスは、出して行ったら勢いがつきすぎ、掛かり気味にハナに立って2着に惜敗した。その反省から、今回は、馬ごみのなかで折り合いをつけるのかと思いきや、あえて同じように前に行きながら、エキサイトしないようなだめる――という戦術に出た。前に1頭、小牧太のキリシマオジョウを置き、さらに内ラチを見せ、いい意味でラチに頼らせることでリラックスさせ、直線までエネルギーを溜めることに成功したのだろう。
父を彷彿させる直線の底力勝負。
そんなルメールの手綱さばきも見事だったが、何より、馬が強かった。
前半800mが46秒8、後半800mが47秒6。後半のほうが時計を要しているということは、ペースが速かったことを示している。良馬場という発表だったが、力のいる馬場状態だったようだ。その流れを2番手で追いかけ、3、4コーナー中間で前にいたキリシマオジョウが逸走しかけても動じず、直線で2馬身突き放した走りには、「女の子」らしからぬ余裕と風格すら感じられた。
自身にスパッと切れる脚がないので、道中は後続にもある程度脚を使わせ、直線で底力勝負に持ち込んで押し切る――父ダイワメジャーと、その妹のダイワスカーレットを彷彿させるレース運びだった。
この馬以外で上位に来たのは、中団から後方に控えた馬ばかりだ。先行馬に不利な流れで前に行って勝ってしまうのだから、他馬にはどうにもできない。
現時点では、来春同じコースで行われる桜花賞の戴冠にもっとも近いところにいることは間違いない。