プロレスのじかんBACK NUMBER
誰も見たことない光景を見せてやる!
鈴木みのるvs.ノア、衝撃の結末へ。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2015/12/08 13:30
12月23日の大田区総合体育館大会で丸藤正道と戦うGHCヘビー級王者の鈴木。「何もかも終わらせよう」とコメントしている。
ただただプロレスラーになるために生きた十代。
「もう日常の生活のことなんて関係ない!」
プロレスラーになるためにはどうしたらいいのか? あわてて情報を集め始め、1カ月後には新日本プロレスの事務所に履歴書を持って訪ねた。中3の夏、当然のように門前払いを喰らった。漫画のようにうまくはいかなかった。
小学校、中学校とやっていた剣道は、プロレスを好きになってからは竹刀を持って闘うなんて悪役の上田馬之助じゃないかと思った。「やっぱ男なら素手だろ」。それで剣道をやめ、高校からレスリングを始めた。
自分は常に漫画の中で生きている感覚だから、設定として、神奈川県下でレスリングが一番強い男子校、しかもヤンキーが多く集まると言われていた高校を選んだ。選択と行動のすべてが自分がいかに人気漫画の主人公で居続けるかという発想。そして高校卒業後、新日本プロレスに入門を果たした。
漫画のようなプロレス。
かつて、ケガをして引退寸前に追い込まれたとき、周りにいた仲間がいなくなり、友達だと思っていた人も去り、また少年時代のようにポツンとひとりになった。しかし、プロレスラー鈴木みのるはそのとき「もしかしたら、いま、凄くおもしろいところなんじゃないかな」と思った。この先、自分がさらに上がるために、いまは落ちたシーンを描いてるんだ。たぶん、そう思わないと次に行けなかった。そうでも考えないと諦めちゃいそうな自分がいたから。
漫画のようなプロレス。
2015年という年は「古いものが破壊され、新しいものができる年」だと鈴木は言う。古いものとはノアの体制であり、かつてのプロレスのスタイルであり、天龍源一郎の引退であり。まだ1年は終わってはいないけど、その締め括りがノアの沈没だと考えている。
47歳のベテランである鈴木みのるが、古いものを破壊する側に立っているということ。コンディションがいいことを褒められてもなんとも思わないし、むしろ「バカにしてんのか?」って思う。同世代となんて競争していない。20代のオカダ・カズチカ、30代の棚橋弘至、丸藤正道よりもスタミナ、筋力、スピード、すべてにおいて優れていると感じている。常に自分が漫画のようなプロレスの主人公だから。