濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
MMAブレイクのカギは“感情移入”。
『ROAD TO UFC JAPAN』最終決着は!?
posted2015/10/04 10:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Getty Images
9月27日、UFC日本大会を観戦するためにさいたまスーパーアリーナを訪れた格闘技ファンの多くは、これまでとは違う気持ちで“世界最高峰のMMAイベント”に接したのではないか。
簡単に言えば、感情移入の度合いが違った。
そうさせたのは、テレビ東京で放送された『ROAD TO UFC JAPAN』だ。日本の選手たち8名がUFCとの契約をかけてフェザー級のトーナメントを争うという内容で、番組では選手それぞれの背景や個性もじっくりと掘り下げられた。
そして、このトーナメントの決勝戦が、UFC日本大会で行なわれたのである。大会のメインイベントは、番組で選手たちのコーチを務めたジョシュ・バーネットとロイ・ネルソンの一戦だった。
MMA=酒場のケンカのイメージが変わったきっかけ。
『ROAD TO UFC JAPAN』は、アメリカで人気を博した『THE ULTIMATE FIGHTER(TUF)』の日本版。UFCが大ブレイクしたのは、この番組がきっかけだったと言われている。試合だけでなく、共同生活を送りながらサクセスを目指す選手たちに視聴者が感情移入できたからだ。
グラウンドで相手を殴ることが許されているからか、MMAはバーファイト=酒場のケンカと揶揄されることも多い。ボクシングやレスリングといった“スポーツ”に比べて、“なんでもあり”の闘いなど残酷ショーにすぎず、選手も野蛮な荒くれ者だろうというわけだ。
そんなイメージが誤解であることを、TUFの視聴者は知った。MMAには技術の裏付けがあり、選手たちはアスリートであると同時に悩みを抱え、時には傷ついて涙する“人間”であることが伝わったのだ。
『ROAD TO UFC JAPAN』でも、選手たちの人間性がクローズアップされた。選手生活のラストチャンスとして臨む選手がいれば、ビッグチャンスに燃える若者もいる。家族の支えがあり、選手同士の友情が芽生え、いつしか視聴者は選手たちを他人とは思えなくなってくる。
トーナメント決勝戦、廣田瑞人vs.石原夜叉坊が行なわれたのは第5試合だったが、2人がケージに入ると大歓声が湧き起こった。番組を見てきた者にとっては、UFCとの契約をかけて闘う彼らが世界王者にも劣らないほど魅力的な存在になっていたのだ。