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周囲の人が口々に「大人になった」。
涌井秀章がロッテで取り戻したもの。 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/09/25 11:40

周囲の人が口々に「大人になった」。涌井秀章がロッテで取り戻したもの。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

9敗目となった試合でも、6回7安打2失点とQSを守っていた涌井。

勝利数で大谷に次ぐ2位につけている涌井。

 ここまで(9月23日現在)25試合を投げて12勝をあげている涌井は、ハーラートップの大谷翔平(北海道日本ハム)に2勝差の2位につけている。首脳陣だけでなく味方投手陣にとっても頼もしいかぎりであるが、中継ぎ陣の1人で今季37試合に登板している香月良仁は、涌井について質問をするとこんなことを語ってくれた。

「先発はよく6回3失点と言われますけど、毎試合7回くらいまで投げるのって相当大変だと思うんです。僕も中継ぎで今年30試合以上投げていますけど、それでも相当しんどいので、そこで僕が感じるのは、第一に体が半端じゃなく強くなければできない、そして年間を通して変わらないスタミナもあるってことです。

 それでいて怪我しないように、(スイッチを)入れるときは入れて、無理しなくていいときはそうする。言うのは簡単ですけど、そう簡単にできることじゃないと思います。しかも相手のエース級と対決して勝ちを積み重ねているわけですからね。中継ぎの立場から見れば、投げてみなければ分からない、今回凄く良かったけど、次に投げたらよく分からないという先発よりも、7回くらいまで勝ち負け関係なく毎回投げてくれた方が、計算もできるし、体を休ませることができるので本当に助かるんです」

 先発投手の1つの指標とされているQS(クオリティスタート/6イニング以上投げて自責点3以内)が、今季の涌井は全登板数25試合中18試合を数えているが、これは全体の7割を占める数字だ。完投数は24試合に投げてわずか1つで、沢村賞を獲った'09年の数字と比べれば、物足りなくも感じるが、今季は球界全体で先発投手の完投数も少なく、これまで以上に投手の分業制が叫ばれるなかであげた数字である。

年齢を重ねて投球術に深みが出てきた。

 大迫コーチは言う。

「僕はずっと見てきて、仕事だけじゃなく普段の付き合いもあるじゃないですか。そうするといい意味で大人になってきていると感じるんです。だから、投球を見ていても、さほど無理してはいかない。自分のペースをしっかり守って、試合に入り込んでいく。だから昔みたいな(相手打者を)威嚇するような威力はないかもしれない。けれど、バッターはそこに戸惑うわけでしょう。そういう意味では年齢と共にいろんなものを経験してきて、それがいい意味で技に出てきている。それもこれまでの様々な経験から来ていることじゃないですか」

【次ページ】 「(涌井は)まだ進化していると思いますよ」

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