野球クロスロードBACK NUMBER
山田哲人、成功率88.2%で30盗塁。
唯一目標に掲げた盗塁の“緻密さ”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2015/09/08 11:30
個人記録は、本塁打で9本差、盗塁で6差の1位。打点は2点差、打率が.002差で共に2位(すべて9月7日現在)。
優勝と史上初トリプルスリーの三冠王も!?
5日は前日とは異なる駆け引きを披露した。
7回に出塁すると、黒田博樹の合計10回にわたる牽制や時間差のクイックにも臆することなく、熟練の投手とのせめぎあいを制して29個目の盗塁を成功させた。
トリプルスリーという快挙のせいか、盗塁の数に注目が集まりがちなのは仕方がない。だが、このような緻密な技術が身についてこその30盗塁なのだ。それは、真中満監督もはっきりと認めている。
「プレッシャーがあるなか、勝ちにこだわる走塁をしてくれていますよね。成功率(8割8分2厘)を見ても、ただ走っているわけではなく、チームプレーのなかでしっかりと走ってくれているのが伝わってきます。これで少しは気が楽になったかな?」
9月7日現在、チームは首位・阪神に0.5ゲーム差の2位。緊迫した局面において、山田がすでにトリプルスリーを確実としたのは大きい。
本塁打と盗塁でタイトルを独走し、打率、打点もトップを射程圏内に入れているだけに、周囲は史上初のトリプルスリーの三冠王を期待するだろう。しかし、今の山田には14年ぶりのリーグ制覇に向け、自分のプレーを貫くことしか見えていない。
「タイトルは、獲りたいは獲りたいです。獲りたくないと言ったら嘘になるんで。でも、数字にはこだわらないです。残りを1試合、1試合、大事に。優勝できるように、打って、守って、走っていきます」
傲りなき万能選手。その胸中に迷いはない。