One story of the fieldBACK NUMBER
“鳴くまで待つ”か“鳴かぬなら”か?
阪神と巨人の監督比較、秋の陣。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byNanae Suzuki
posted2015/08/28 10:30
球団からは来季続投も決まった、との声が聞こえてきた和田監督。1年契約で臨んだ就任4年目の今季、果たして優勝の夢を果たすか?
どんな選手も特別扱いしない、原監督の豪腕。
一方、3連覇中の王者・巨人を率いる原辰徳監督は、対極に映る。
阿部慎之助も、村田修一も、長野久義も……誰も監督を待たせることはできない。チーム最年長の井端が証言する。
「進塁打の指示が出て、あわよくばヒットなんて打撃は許されない。どんな打球だろうと絶対に右に転がして進めなければ――このチームは全員がそういう中でやっている」
中日で長くプレーした井端は、他球団と巨人との違いを最も感じている1人だろう。ちなみに井端は通算2000本安打に手が届くところまで迫っている。そのことを問うと、ナンセンスだとばかりに首を振った。
「俺は、そこはもうとっくに超えているよ。自分が打てなくても、チームが勝てばそれでいい。そもそも勝ちに貢献できないと、打席に立てないわけだから。一軍に生き残るためなら三塁だって、一塁だって、どこの守備だってやるよ」
ゴールデングラブ受賞7回の名手にここまで言わせる指揮官。
天下分け目の戦いを迎える――秋が楽しみ。
鳴かぬなら――。
その先がどうなるかを巨人の選手はよく知っているのだろう。その浸透ぶりが原監督の手腕であり、王者の強さなのかも知れない。
果たして、家康は信長を倒せるのか。
熱血先生は、鬼軍曹に勝てるのか。
タテジマに軸足を置く番記者の身としては心配ばかりが浮かんでくる。ただ、この世界には絶対的な原理原則がある。それは結果が正解を決めるということだ。つまり、勝った方が正しいとされるのだ。だから、この秋はおもしろい。
鳴くまで待とう――。
猛虎10年ぶりのリーグ制覇へ、我慢の人は待ち続けるだろう。9月にホトトギスが鳴くことを信じて。