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“謎のチーム”サッカー北朝鮮代表。
その正体を東アジア杯で追いかける。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/08/11 12:40
東アジアカップでの日本代表との初戦。ゴールを決めて喜ぶ北朝鮮の選手たち。先制していた日本だが、試合後半、北朝鮮の粘りで競り負けた。
「韓国に勝てず、残念だ」と微笑む。
キム・チャンボク監督は「韓国に勝てず、残念だ」といいながら、口元が少し緩んでいた。話す声はボソボソとしたものだが、はっきりと韓国人記者の目を見て回答する。筆者からも直接「今日の試合に向けた対策をどう立てたのか?」と朝鮮語で聞いてみた。すると驚くほど具体的な話が返ってきた。
「相手の17番、15番といった側面(サイド)の選手に力があると見ていた。側面をしっかり防御し、その後、攻撃を仕掛けるという作戦だった」
その後もキム監督は穏やかな表情で韓国記者の質問に答え続けた。今後の目標は「(9月3日にアウェーで行われるワールドカップ予選)バーレーン戦」だという。その頃には「長身の海外組ストライカーが戻ってくるから、チームはよりよくなる」ともコメント。キム監督はさらに会見後、席を離れても歩み寄る韓国記者団の質問に丁寧に答え続けていた。
ついに、男子チームの11番から話しを聞けた!
韓国戦後、「もしかしたら選手も口を開くかもしれない」とミックスゾーンで少し粘ってみた。
北朝鮮が通り過ぎる時間帯には、他の記者はほとんどいない。こちらも声をかけながら、選手と並んで歩くことが可能だ。つまり、こちらが止まった状態で進んでいく選手を止めるよりも、目を合わせられる時間が長い。そうやって「話を聞きたいんですが」と切りだすと、多くの選手が立ち去る中、一人だけ立ち止まってくれた。
日本戦にも出場した11番のチョン・イルグァンが、協会スタッフに目を配った。スタッフが「ちょっと話してみたら?」というニュアンスでリアクションをすると、立ち話が始まった。
――今大会の印象はどうだったでしょうか? 特に日本戦は?
「日本戦で発揮した精神力で、次の2試合も戦えればよかったんですが。優勝できずに残念です。日本については、2011年にワールドカップ予選で対戦した時の選手が何人かいたんじゃないかと記憶しています」
北朝鮮男子選手がミックスゾーンでの質問に応じてくれたのは、筆者にとってその2011年9月2日のブラジルワールドカップ3次予選(埼玉)以来2度目だった。
いっぽう、女子代表の雰囲気はあくまで硬かった。
女子チームのキム・グァンミン監督は記者団とは目を合わせようとせず、試合後の会見でも表情を崩さない。8日の大会終了後の会見で、こちらから「日本のメディアだ」と明らかにし、今後の目標などを聞いたが「リオ五輪でいい成績を残すこと」とボソボソと答える程度だった。