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覚醒した大型ボランチ、宇津木瑠美。
「やりきったから、後悔はない」
posted2015/07/24 10:00
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
Noriko Hayakusa
海外勢に臆することなくピッチを縦横無尽に駆け回った。
全力プレーの彼女が語った、選手のあるべき姿。
今回は特別に、Number882号から記事を全文公開します!
初戦のスイス戦に左SBとして先発すると、決勝トーナメント以降はボランチに定着。全7試合中6戦にフル出場するなど、宇津木瑠美はなでしこジャパンの準優勝を支えた1人と言っても過言ではない。
展開力のあるパワフルな左足のキックも魅力だが、168cm、59kgとフィジカルに恵まれ、特に対人プレーに強さを発揮した。
「日本人はあそこまでガツガツいけない」
思い切りの良い守備については、コンビを組んだ阪口夢穂も舌を巻いたほどだ。
「局面によってはセオリーを無視して、リスクを冒しながらも守備をしないといけない。しつこく、相手を怒らせるような守備をしていけば、日本のチャンスにつながる」
日本的発想ではない、1対1で止める守備を意識して。
劣勢になるほど、その存在感は際立ち、とくにボランチに入った際には、持ち前の積極的な守備で、何度も相手の前に入ってインターセプトを試み攻撃の起点となった。2010年からフランスのモンペリエでプレーする宇津木は、身体能力の高い欧米の選手に対しても1対1のぶつかり合いで負けることはほとんどなかった。
「相手選手に対し、味方2人で守備に行くのは日本的発想だと思う。でも、そうすれば別の相手をフリーにしかねない。だからこそ私自身は1人で相手1人を止めないとやられるという覚悟でやっている」
決勝・アメリカ戦の55分、相手陣地で大会MVPに輝いたロイドとのボールの奪い合いに敗れ、自陣までドリブル突破を許すと、全速力で追走し最後はパスを出された先の選手に猛然とプレスをかけてボールを奪い返すシーンがあった。攻守の切り替えの早さと負けん気の強さが出た、宇津木らしいプレーだった。そして、そのアメリカ戦ではボランチでスタートしながらも、リードを許す展開のなか途中で左SBにポジションを移すと、終盤には3バックの左を務めるなど、守備的な位置ならどこでもこなすユーティリティー性の高さも示した。